花火売りの少女

ミンイチ

第1話

 「花火はいりませんか」


 ある冬の街角で少女は花火を売っていました。


 この少女はある雑貨屋に住み込みで働いています。


 この夏の終わりに発注ミスで大量の花火を仕入れてしまい、それを今年中に売り切らなければ追い出されてしまいます。


 今年も残り数時間しかないのに、未だ在庫は大量に残っています。


「花火はいりませんか」


 少しやんちゃそうな人に積極的に声をかけますが、全く売れる様子はありません。


 強い風がいきなり吹き、被っていた帽子と首に巻いていたマフラーがどこかに飛んで行きました。


 さらには、凍っていると思った水たまりに足を突っ込み、靴がびしょびしょに濡れてしまいました。


 あまりの寒さに凍えてしまった少女は木造の家の陰に佇み、花火にセットでついていたマッチで手持ち花火に火をつけました。


 花火は色とりどりの光を出しながら勢いよく燃えて少女の体をほんの少し温めてくれますが、それも少しで終わってしまいました。


 少女はさらなる温もりを求めてもう一度花火に火をつけます。


 先ほどとは違う色の光を出しながら勢いよく燃えて少女の体を少しだけ温めますが、やはりすぐに火が消えてしまいます。


 少女は何度も花火に火をつけて温もりを求めましたが、すぐに消えてしまい十分には暖を取れません。


 たくさんの手持ち花火を使い、残りのここで使えそうな花火は吹きだし花火のみになってしまいました。


 ここは木造の家の影であるということを忘れ、その花火に火をつけてしまいました。


 吹き出し花火の火花はかかりませんでしたが、他の花火を入れているカゴにかかってしまいます。


 そのカゴにあったのは「ロケット花火」「ネズミ花火」「ヘビ花火」などなど、少し危ない花火ばかりでした。


 そのカゴにかかった火花は、それらの花火に火をつけて周囲を燃やし始めました。


 それを見た少女は持っていた花火をその場に捨ておき、一目散で逃げていきます。


 花火が原因で起きた火災は一昼夜かけても消火されず、ついには少女が働いている雑貨屋の倉庫にまで火が回ってきました。


 その倉庫には残りの花火がそれなりの量残っていたので、それに火がつき火災がさらに大きくなりました。


 少女はこの火災の犯人として逮捕され、また、その少女を違法な労働条件で働かせていた雑貨屋の店主も捕まりましたとさ。


 めでたしめでたし?

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花火売りの少女 ミンイチ @DoTK

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