侵略者

ハッピーディストピア!

第1話

 「緊急速報です。今日午後7時43分頃、突如何者かが国会議事堂に侵入しました。それでは現地の状況を生中継にてお伝えします。千波さん、お願いします。」


 アナウンサーが頭を下げると映像は切り替わり、国会議事堂と男が映し出される。


 「はい、えー現在ですね、我々は国会議事堂前にいるのですが、このようにですねテープが張られていまして、えー一般人は入れないようになっています。」


 男は少し後ろに下がると立ち入り禁止と書かれている黄色いテープを見せるようにしてそう言った。そして続ける。

 

 「また犯人はですね、まだ見つかっておらず、今も警察が捜索を続けておりまし『ドゴオォォン!!』うわぁぁ?!」


 男が話している途中、突如、国会議事堂が轟音を立てて爆散した。現場に集まっていた人々は爆風で飛ばされ、地面に叩きつけられている。または、突然の出来事に唖然とするもの、逃げ惑っているものがいた。


 映像に映っていた男はカメラマンと激突し、その衝撃でカメラも飛んでしったのか映像が乱れる。


 「…くっくっくっ、人間とは随分と貧弱なものだな!!」


 皆が騒ぐ中、一際大きい声があたりに響く。そして乱れが治った映像は横になってしまっているものの、国会議事堂からでる煙の中からなにか二つの真紅に輝く何かが浮かび上がっているのを確認出来る。


 「…そうだな!!これなら支配なんて余裕のよっちゃんだな、にょははは!!!」


 不穏な言葉、そしてなかなかに独特な笑い声に人々は足を止める。


 「聞けぇぇい!!貧弱な人間どもよ!!今宵、我々ネコノミクスたちが貴様らの世界を侵略することを宣言する!!これはそう!!…あれ?なんだっけ?クロノボール、あれなんて言うんだっけ?」


 煙が徐々に治っていき、遂にその正体は明かされる。


 一方は嫌に落ち着いた緑の羽毛が覆っている体、左黄色く立派な嘴、そして狂気にでも満ちているかのような赤い瞳、頭には猫の耳のようなもの、濃い緑の空を翔けることの出来るであろう翼。


 そしてもう一方は光を一切反射することのない真っ黒で月のように丸い体、その体から放射線状に伸びる細い触手、うち2本は地につき足のような機能をしており、もう2本は腕のように見える。そして竜の頭部でも模したかのような白いお面、その隙間から覗く、赤く、そしてよく見るとわかる複数の瞳孔。


 一見すれば、ゆるキャラのような2匹、しかしそれが狂気を強くする。


 『これはクロノボールたちの、貴様らニンゲンへの宣戦布告なり』


 黒いのがどこからともなく看板を取り出して鳥のようなものに伝える。


 「そうそれ!!にょははは!!せいぜい抵抗することだな!!」


 ここで映像は砂嵐となり終わる。


 「…ネコノミクスとクロノボール、か。随分とふざけた名前かつ見た目だな。こんなもん当時の人からゃすりゃぁ、そこまでの脅威になるとは思わなかったろうなぁ。」


 ボロ服でガタイのいい男がそう嘆きながらテレビを消す。


 「まさか世界を破滅させるなんて考えもしなかったろうね。」


 そう言いながら後ろで荷造りする、これまたボロ服の女。


 「支配するとかほざいといてあんだけ破壊するとか、まじでふざけ過ぎたろ。」


 「勢いも凄いし、もうじきここも危ないらしいからね。あっという間に地球が禿げちゃうよ。」


 「それがガチなんだから洒落になんねぇ。」

 

 「一周回って笑えちゃうよね。あーあ、暇だ暇だって言ってたあの頃が恋しいわぁ。アニメみたいな展開、期待したことはあるけど結構しんどいな。」


 「食料も残りごく僅かになっちまったしな、これじゃぁいつまで持つことやら。」


 そう言いながら2つの缶詰を大切そうに仕舞い込む。すると、


 『ウウーーーーーーウウ、侵略者が近づいてきます!!皆さん早く避難しますよ!!』


 「まじか、もうかよ!!里江急ぐぞ!!」


 「っ!!そうだね、またまたしてちゃいられないね!!」


 そう言って2人は部屋から出て行く。いつかまた、暇だった日常を願いながら。


 「君たち遅っそいねぇぇえ、そんなチンタラしてたら死んじまうよ!!にょははは!!」

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侵略者 ハッピーディストピア! @ataoka881

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