第5話 上田と山田 その3

「駄作通り越して、ゴミね。」

 山田は落胆の先、軽蔑の域にまで達していた。

 山田の美しさではこの侮蔑の目線の方が似合っているまである。

「なにを言う、非常に多層的で、民族と宗教の深淵の一端を除く経験だっただろ。」

「後半はほとんど下ネタじゃないか。」

「風俗ということば、その意味のほかに生活という意味もある。むしろそちらが正式な意味だ。人々の生活に根付く民俗学という学問の話として十分だろう。」


 山田のうんざりとした雰囲気と対照的に、上田は嬉しそうに語っていた。

 その話も止みそうにない。オフィスに帰ったら、これの文字起こしがあるかもなのかと気は滅入るばかりである。

「そう、この話の肝を言うのであれば、神の炎の鎮火の鍵はちん……ごふっ!」

「お前の言おうとしていることは全部、お見通しだぁ!」

 山田の右ストレートが上田を黙らせた。その右ストレートはヤンキー高校生だらけの教室をまとめ上げるのも可能なほどに鋭かった。

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南国因習集落『炎縷々』 くれいもあ @craymore

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