第207話 野球とサッカーの衝突

「ヒーローはユウヤ達だけじゃねぇってコトよ! どこの誰だか知らねぇけど……」


「平和を脅かす奴らはこれ以上! 見過ごすことはできなぇぜ!」


「……この技を出すに至らせたことは褒めてあげる。本気よ? 意識の具現化カムトゥルー。くたばりなさい」


 スズは謎の技名を呟く。何をするつもりだ? アキヒコとヒュウマがスズを注視しようとしたその瞬間、スズの身体上で回転し続けたボールが突然、キレイに真っ二つに割れたのだ。


「ボ、ボールが!」

「割れただと……!?」


「フフッ、その通り。アンタ達の攻撃自体を中断させたワケ。意識の具現化カムトゥルー、この技は周りにいる人間の内なる思いや願いをありとあらゆる形で現実のものにする……あそこを見てご覧なさい」


「……あれはッ!」


 スズが指差す先にはサッカーボールを抱えながら迷惑そうにこちらを眺めてくる集団。錬力野球サークルとグラウンドを奪い合いがちの錬力サッカーサークル、「カオスゼブラ」のメンバーである。


「ケンカすんのも1ヶ月ぶりやなぁ……大学ボロボロにされたさかい、久々にサッカーできる思ったらこれかいな……」

「まさか、その2人でオレ達に立ち向かおうってかァ? 無駄無駄、さっさとそこをどきやがれ!」


 ユウヤ達のサークルとは月に2回はモメている。ボールが飛んでくるだの、グラウンドの整備ができていないだの、お互いに不満を言い合うばかりである。最近はチーム・ウェザーの破壊活動の影響でマトモにグラウンドが使えず、ついにフラストレーションが爆発したのだろう、遠くから見ても眉間にシワが寄っているのがわかる。


「こいつら……こんなときに限って、タイミング悪すぎだろ!」


「いや待てアキヒコ、こいつらなんだか様子が変だぞ?」


「フフッ、御名答♪」


「「は?」」


「私がこの技を使った瞬間、アンタ達のボールは割れた。繰り返すけどね、この技は周りにいる人の思いを現実のものにするの。それもかなり過激な形でね……きっとあの子達、アンタ達に『野球いい加減やめてほしい』って思ってたんでしょうね!」


「チ、チクショウ……これじゃ実質2vs12じゃねえか、勝てっこねぇぞこんなの!」


「あ、諦めんなよアキヒコ! オレ達が弱気になりゃ、それこそ……この技でそれが実現して負け確になっちまうかもしれないぞ!」


「なら、やるしかねぇってのかよ……そんなことしたくないっつーのに!」


 戦闘の構えをとるアキヒコとヒュウマを見て、カオスゼブラズのメンバーはそれに対抗する。


「オーオー、どうやら歯向かうつもりらしいやんけ! ならこっちも容赦はせぇへんで」


「その通りやぞゴラ! 野球だとホーム側が後攻らしいから、こっちから攻撃するのは癪に障るがな……こっちから先行してグラウンドという名のホームを占拠したるわあああああああ!」


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