第152話 地獄の番犬vs天空の翼馬
「させるかあああああああ! オレも発動してやる、ペガサスの力をな!」
ユウヤも負けじと内なる力を開放する。何度見ても、この状態のユウヤは神々しい。だが、やはりスズはまるで何かを知っている様子で、落ち着いてユウヤを挑発する。
「その程度の出力で戦う気なのね……アンタ、同時にケルピーの力も併用できるってのに」
(オレの何から何まで知ってやがんだこいつ! だが隙を見せてる余裕なんて無ぇ!)
「……お前に奥の手を明かす程の価値は無いって言いたいんだよ。それに、切り札は毎度毎度出さねぇからこそ意味があるんだろ」
「ふーん。なら格の差ってのを見せてやるわ、ジェフリー!」
スズが耳にピアスのようにつけた鈴をシャリンと鳴らすと、その腕から真っ黒い火球が飛び出してきた。まるでそれは地獄の業火、まともに喰らえば魂すら焼かれてしまいそうだ。
「さぁ、第一関門だよジェフリー! 未知の能力に……どうやって対応する?」
「決まってんだろ? お前にめがけて弾丸ライナーだぜ、トルネードリィスラッガアアアアアアッ!」
ユウヤは周囲の空気と風を圧縮して作ったバットで火球を打ち返そうとフルスイングするが、球とバットが当たった瞬間バットは折れてユウヤは吹き飛ばされた。
「ぐああああああああああ! なんて威力だ、とてつもねぇぞ……」
「ハハハハハハ! 人間界でぬくぬく19年生きてりゃ、そらその程度にしかならないわ。それに閉め切られた
(ま、まずいな……こうなったら、水属性のケルピーに切り替えるべきか!? いや、でもそれじゃアイツの思うツボ!)
「ああ、そうかいそうかい。ならば、これならどうだ!」
ユウヤは勢いをつけてスズに駆け寄り、強烈な蹴りを繰り出そうと試みる。イヌよりウマの方が速いだろ、多分! ユウヤはフェイントを織り交ぜスズを翻弄しつつ、少しずつ距離を縮める。
「ウマの脚力、舐めてちゃ全身骨折だぜ? 必殺、
「甘い甘い甘いッ! 私はこう見えて百戦錬磨、初動を見ただけでどんな技なんて見切れるわ!」
スズは突然両腕の犬の首を蛇のように伸ばし、剣と剣がぶつかり合うようにユウヤの蹴りを跳ね返す。四肢のうち2本を攻撃という目的のために縛られているユウヤに対し、スズは聖霊の力により増えた体のパーツで抵抗できる。どうみても有利なのはスズである。
「ほらほらほらぁ! だんだんと動きが遅くなってんぞ、流石に体力無くなってきてんじゃねえのか?」
「体力……? 違うさ、次なる秘策の準備のためにチャージしていたんだよ!」
「チャージ……? まさか!」
「フッ……喰らえスズ、ゼロ距離の突風を!」
ユウヤはスズの目の前で、風を球状に圧縮……することなく、そのまま突風として解き放った。新幹線が目の前を駆け抜けていったのような、重くて鋭い風が敵意を持ってスズに襲いかかる。
スズは意表を突かれたようで、慌てて腕を十字に組んで身を守る。これではスズは中々ユウヤの攻撃を防ぎきれない。一気に形勢は逆転、ユウヤはスズを煽り返す。
「この状態でマルチタスクは流石にバテちまうからな……意表を突いてやったのさ、『初動を見ればどんな技でも見切れる』を早速打ち砕いてやりたくてなぁ!」
(さ、寒いっ……! それにしても、『プライドをぶっ壊す』……ホリズンイリス族の習性の1つ、破壊衝動が身体能力を一時的に引き上げる、それが発動したのね。ならばこっちも、ジェフリー! アンタのその身を先にぶっ潰すことにするわ!)
「私の得意技を1つを見ずに得意げになっちゃっていいの……? 私は聖霊を一時的に、あえて暴走させることもできる。まるでF1レーサーが公道では安全運転を、サーキットではエキサイティングな運転をするようにねっ!」
そう言うとスズは2体の犬を自分の口から吸い込み、再び黒い陽炎にその身を隠した。第2形態的なものでもあるのか? ユウヤがそれを見つめていると、中から現れたのは真っ黒い霧、そのものであった。
「どーお? 私、一体どこに行ったでしょーか!」
「き、霧が喋った……って、んなワケあるか! 隠れてんだろ中に、さっさと姿表しやがれ!」
「残念、不正解……これこそ私の得意技、ナイトメア! これを見切れたものは誰一人としていなかったわ……さぁ、悪夢の前にくたばりなっ!」
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