3章 現代事変編〜壱〜
第124話 謎のヒーロー
コウキによる洗脳装置出庫の翌日。世間は大騒ぎとなっていた。放送事故どころでない例の生配信。SNSやニュースでは「凝った演出の演劇」だと大絶賛されていたが、実際はそのようなものでは無い。仕方がないと言えば仕方がないのだが、あまりにも無神経な世論にユウヤは腹が立った。
「演劇? んなワケねぇだろ! ったく……」
人というのは不思議なもので、時に自分が不快だと感じるものを自ら見に行くことがある。「嫌なら見るな」とも言われるが……ユウヤの場合、リアルタイムの詳しい状況が気になって仕方が無いのだ。1秒に1回は画面をスワイプし、新たな投稿をすべて読もうとする。
「くそ、どいつもこいつも
「ちょっとアンタ、何一人でブツブツ言ってんのー? ほら届いてたわよ、ユウヤ宛の封筒」
「ゲッ! 聞いてたのか、オカン……んで封筒って?」
「見てないから知らないわよ。お友達からじゃないの?」
「えぇ……今時友達と紙でやりとりなんてするかなぁ……」
心当たりのない突然の手紙に困惑しながらも、ユウヤはその封を開ける。すると中から出てきたのは、ただ一言、
達筆な文字で書かれた手紙であった。
“ユウヤへ K府K市へ来い。昨日の生放送についてだ”
「……何これ」
誰がこの手紙を出したのか、全く検討もつかない。だが、もしかしたらコウキによる生配信に違和感を持ってくれた、味方となってくれる人物かもしれない。怖い気持ちもあったが、ユウヤは早速電車でその場所へ向かうことにした。
電車の中では高校生の会話が聞こえてくる。ゴールデンウイークも近づいてきた中、どこかに出かけるとか、そのような会話かと思いきや……
「なぁ、昨日の生放送見た?
「あー、見た見た! 流石だわ、ホントに」
「ユウヤって人も迫真の演技だったよな! 真似してみるわ、グァア! アアアアアアアアア、ン゙ホウホゥッ!」
「うわー、チョー似てる! ヤバイヤバイ!」
「に、似てねえしそいつヤベーから見んじゃねえ、二度と!」
「えっ?」
「は?」
「……あ、ピンチだ……」
失態。ユウヤは思わず大きな声を出してしまった。これでは「ヤバい」のはユウヤの方だ。
だが、意外にも高校生達はユウヤに興味を示してきた。昨日の配信に出てた人だ、と。その声、その見た目からユウヤはたちまち車両内の人気者となってしまったのだ。
「すげぇ、昨日の人だ!」
「サインください!」
「え、あの人ってもしかして!」
「キャッ、すごーい!」
「まさか、こんなところで会えるなんて!」
車両内のあちかこちらから老若男女が近寄ってくる。やめてくれ、とユウヤはハンドサインを露骨に見せつけるが、それでも皆サインや写真撮影を求めてくる。
(ああもう最悪だ……役者とかじゃないってのに、マジで近いうちに痛い目見るってのに……)
耐えきれなくなったユウヤは、K府からは少し離れている駅で途中下車し、急に発生したオーディエンスから逃げすることにした。
「ああ、もう。最先悪すぎて……」
ユウヤはしぶしぶ、タクシーで数キロ走るハメになったとさ。
その頃……目的地であるK府K市では異変が起きていた。突如街中で多数の男女が同時に倒れたかと思うと、その途端眩い光を放つ。やがてその中からは異形とも言うべき、人の形をした何かが現れてはうごめき始めた。
「キャアアアアア! バケモノよー!」
「おい、何だあれ、逃げるぞ!」
「ヒィィィィ! 助けてええええ!」
「グアアアアア……」
「グルルルル……」
「グオオオオオオオ!」
異形は早速、無差別的に人を襲い始める。地獄絵図と化したこの都市に、1人の男が現れた。
「さーてとっ! またまた武勇伝、作り上げちゃいますか! かかってこい、バケモンども!」
「グオオオオオオオ!」
「グアアアアアアア!」
異形達は謎の男のところへと這いずってゆく。そして口からビームのようなものを出そうとした瞬間、男はその背中に体を空中で回転させながら強烈な蹴りを食らわせた。その姿はまるでカポエイラの技、「パラフーゾ」のようだ。
「おらっ! はっ、はっ、はぁ! ほらほら、もっとかかっきやがれぃ!」
その男はたった1人で、ゾンビの如く次々としぶとく襲いかかってくる異形達を相手にする。まるで異形相手にトレーニングを、いや、もはや遊んでいるようだ。
5分ほど経ったところで男は標識の上に飛び乗り、勢いをつけて飛び降りる。
「行くぞ必殺! 喰らいやがれえええええええ!」
「グオ、グオオオオオオオ!?」
突如現れたヒーロー、モニトー。その戦闘センスはかなりのもので、異形達を簡単に倒してしまった。その正体とは!?
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