第82話 パーキング・バトルエリア
「覚悟せぇやああああああ!」
男達は先制的に四方八方から同時に殴りかかってきた。真銅はそれを確認すると、両手を合わせてヨガのポーズを取り攻撃に備える。
「ギャハハハハ! 何だそれ、全身ガラあきやないか……錬力値平均600r、さらに全員体育系出身のダブルパワーの嵐を喰らえやあああああ!」
(この空気の流れ……まずやるべきは!)
まずは3人の男が同時に殴りかかり、1人の男が回し蹴りで横腹を狙ってくる。それを確認した真銅は、
「チャコールバインドオオオオ!」
と叫び、男達をまとめて拘束してしまった。
「くそっ、何だこの感覚!」
「軽トラでも背負ってるみたいに重くて動けん……それに何だか炭臭ぇ!」
「おおっと、動かない方がいいですよ。些細なことで燃えちゃいますからね、拘束中は」
「くそ……ナメんなああああああ!」
後ろから次々と男達が飛び出してくるが、真銅は落ち着いて1つ1つの攻撃をかわし、流し、受け止めていく。その動作はモグラ叩きでもしているかのようだ、ただ淡々と流れ作業のように攻撃をいなしていく。
「くそぉ、お前もっとちゃんと攻撃しやがれ!」
「あぁ!? 分かってんだよこの野郎!」
ついには仲間割れする者まで現れた。それでも真銅は顔色1つ変えずに敵の攻撃に対応していく。その瞬間だった。複雑に、乱雑に動く敵が、誤って拘束されている敵の体を踏んづけてしまったのだ。
「あっ、ごめん!」
「気にするな、奴をさっさと仕留めてアレを回収す――」
「……点火」
ドカアアアアアアン! 2人は爆発に巻き込まれた。何事だとサービスエリアの店員がこちらに出てくるが、真銅は来るなと言わんばかりに眼光を飛ばす。するとそれに怯えた店員は再び物陰に隠れて様子を見守るだけになった。
「ゲホ、ゲホッ……何だ今の……」
「爆発したよな、踏んじまった瞬間……」
黒煙の中からはぐったりとした2人の男。それに気付いた真銅は得意げに解説する。
「チャコールバインド……相手を拘束するだけではなく、名前の通り相手を消し炭に変える攻守一体の技。それが今のものです」
「く、くそ……」
「私はまだまだ元気ですよ? ほら、かかってきなさい!」
「なら……首持って帰ってやるぞお前らあああああ!」
「「オーー!」」
再び男達は次々と攻撃してくる……が、やることは変わらない。一発一発、冷静に攻撃へと対応していくだけだ。
ずっと十数人から繰り出される攻撃に淡々と対応する真銅に苛立ったのか、ついに男の1人が両手にビリビリと雷を纏わせて死角から突進してきた。
「ハハハハハ! あのヒビキ様と同じ雷属性だ、受け止められるかなぁ!」
「錬力術!? しまっ……いやあああああっ!」
真銅はまともに攻撃を浴びてしまった。衝突の勢いで宙に投げ出され、さらに電撃のダブルパンチを浴びた真銅。だが、奴らの攻撃がここで中断されることはない。サーカスのように2人の男がジャンプ台のように1人の男を投げ出し、さらなる連撃を狙ってきたのだ。
「ガハハハハハハ! さぁ喰らえ、オレ様の火球攻撃をなああああ!」
「こ、これは防ぎきれ――」
ドカアアアアン! 突如、打ち上げ花火が空に1発打ち上がった。煙が真銅を包んだのを確認すると、男達は狂喜乱舞してそのまま車に乗って去っていった。
「やった、やったぞ! ガーッハッハッハッハ!」
「これで計画が進みますねぇ!」
「今回の新作は指示や洗脳の強さをより高めている……これでお喜びになる、“あのお方々”も!」
敵の車内はパーティ会場のようだ。目的達成のために大きなタスクをクリアできたと大喜びだ。真銅を始末しきれていないとも知らずに……
「油断しました、私としたことが……錬力術を絡めた格闘、もっと鍛えなければなりませんね……」
真銅はスーツを拾い上げてパタン、パタンとはたいてから着直し、何者かへと電話をかけた。
「……もしもし、大変なことが起きてしまいました」
「ほうほう、どうしたんじゃ?」
「敵にいつの間にか今回の計画がバレていたようです……もちろんサンプルは死守しましたが、かなり余裕はない状況かと」
「そうか……きっと乗って来た車のナンバーもバレていることじゃろ、より注意を払ってこちらに向かってくれ」
「……了解です。それでは」
「……さて、そろそろ向かいますか。奴らももういなくなったことでしょう」
真銅は再び車を走らせた。
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