第81話 ドライブハンティング・インザハイウェイ
《炊いた白米の上に生卵、そこにまさかのトマトソース、チーズ、パセ――》
《続いてのニュースです。N県Iエリアにて古びたタブレット状のものが出土、専門家はオーパーツである可――》
《例え僕ら〜結婚会場が〜トイレだってコンビニだって水飲み場の前だとし――》
《強烈な打球ぅぅぅぅ! 4万人のファンに最高のプレゼントだあああああ――》
《君に僕が力を貸したことで君が暴走すれば〜僕は命かけて贖罪をするか――》
「……ラジオ消しますか」
真銅はナビの音声だけに切り替えて車を走らせる。平日昼間の高速道路ということもあって比較的すいている。目的地はO県にあるスナモギ大学、主要時間にして2,30分程だ。
特に遠い場所にあるというワケでは決してないが、真銅は道中で襲撃されることを何より心配していた。歩道などから敵に攻撃されると大事故になりかねない。電車に乗るにしても、狭い空間だと逃げることができないし、他の人を巻き込みかねない。だから、人の侵入が不可能な高速道路を移動手段として選択したのだ。
もちろん、ただ移動するだけならばチーム・ウェザーに襲われることはあまり無いだろう。高速道路を走りながら戦闘するのは彼ら側としても危険が伴うし、何より事故が起きれば足がついてしまうことになる。
だが真銅は今彼らに関するもの……そう、指輪をある目的のために運んでいる。指輪の中に何やら怪しいシステムを組み込まれていて、それを調査されるのではと彼ら側にバレてしまっては、運転中は安全という予測も全てひっくり返ってしまうだろう。真銅のハンドルを握る手からは汗が吹き出していた。突然、嫌な予感が真銅の脳裏に走った。
「何、今のっ……!?」
一瞬、サイドミラーに黒い車が何台か写った。何の変哲もないただの後続車ではあるが、一瞬まるで連携するような動きを見せたのだ。まるで、軍隊が戦地に突入するかのように。
「挙動不審がバレては逆効果、ここは平穏を保って……」
真銅は前の車を少しずつ追い抜いていく。怪しい黒い追跡者から距離を取るためだ。だが、その瞬間それらは反射的に距離を詰め、またまた同じような距離感となってしまった。
気付くと真銅は黒い車に囲まれていた。これではまるで追い込み猟に引っかかったシカやイノシシである。疑念が事実へと変わった、こいつらはまさに“敵”だ。
「……一旦退避ですね、どちみちここでは戦えません」
真銅はある程度この高速道路を利用していたため、どこにサービスエリアがあるのかなどを理解していた。そして、奇跡的にその場所はまさに目の前であった。真銅はウィンカーを出し、一度サービスエリアに逃げ込もうとすると、今度はやはり車は全て真銅の後ろをついてきた。洗練された、1ミリのズレも無い動き。何て恐ろしいんだ、チーム・ウェザーは!
真銅はサービスエリアのど真ん中に前向きで駐車すると、黒い車はその周りに円を描くように乱雑に停車した。そして、中からはスーツ姿にジャラジャラとアクセサリーを大量に着用した大柄な男がぞろぞろと現れた。
「姉ちゃんさぁ……! 変なモン積んでるはずよな、車に!」
「とぼけたらその瞬間いてこましたるからなぁ!」
「さっさと渡さんかい……言われんでも自分が一番知っとるはずや!」
(こいつらが要求しているのはあのアクセサリー……やっぱり、アレに後ろめたい”何か“があるのは間違いない!)
真銅は察した。いつの間に嗅ぎつけたのかは分からないが、男達が出せと言っているのはヒサシが装着していたあの指輪だと。もちろん、ここで大人しく渡せばさっさと帰ってくれる可能性はある……が、そのような選択肢は脳裏にちらつきすらしなかった。真銅はジャケットを脱ぎ、軽くストレッチをする。
「残念ですが……そのようなことはできません」
「何だと……? ナメてんのかよ……あ゛ぁん!?」
「もう一度チャンスやるわ……返すか、もしくは痛い目見るか、どっちか選ばんかい!」
男達は真銅への威圧をやめない。いや、スーツを脱いだことにより怒りのボルテージは数倍に膨れ上がっている。それでも真銅は全く臆することなく、淡々と男達に立ち向かう。指輪を調べ、奴らの陰謀を止めるために。
「おらババァどこ見てんじゃい! これ以上耳貸さんっつーなら……力づくでいくまでじゃ、行くぞお前らあああああ!」
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