第7話 おしまい
――村での出来事を話し終えると、男は立て続けに酒を飲み干し、のろのろと自分の考えを述べた。
👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺
腰ヘコ踊りの怖い点はね、遅効性ってことなんですよ。
ゆっくり洗脳が効いてくる。
狭山たちは別でしたけど。
あれは特別に何かされたんじゃないかな?
そういえば、腹のところに呪文みたいな紋章みたいな刺青されてたし。それで一気にヘコ化したんでしょうね。
俺はそんな紋とかいれられなかったから町に帰ってこられたわけです。
でもね、それって他の客たちも一緒なんですよ。
見た者に踊り強制するのが、こしへこ様の力なわけですから。それはあの場にいた全員に効いてる。
その強制力はあとあとジワジワ浸食してきます。
それがあの村の罠なんですよ。
例えば一気に客がヘコ化して、帰ってこなかったらどうなります?
事件になりますよ。
カルト教団の拉致とかいわれるでしょうね。
でも遅効性だから、みんな俺みたいに町へ降りいくわけ。
で、リピーターになる。
そのあいだに勧誘したり噂を広めるんですよ。
それも秘密裏に。
腰ヘコって後ろめたいじゃないですか?
だもんで静かに勧誘するんですよ。腰ヘコ。
だから、静かに確実に繁殖していくことになる。
腰ヘコ踊りが。
気づいたときには国中に毒が回ってるんじゃないですかね。国の半分がヘコ化したりしてる。
まあ、この世に神様がいるなら、だまってないでしょうけど。
そのうち、ヘコ神様より上のランクの神様が全員に罰を与えるんじゃないですか。そうなったら全員死にますね。ヘコ御子。
でも、全員文句ないと思いますよ。腰ヘコした時点で終わってるんですから俺ら。
でもいいんです。
腰ヘコさえできれば。
腰ヘコしてえよ。
ねえ?
カタカタいってるの聞こえる?
ていうかガンガン机に当たりはじめたよ、ほら。
俺揺れてるよね。
ああ。
もういいっすよね。以上です。
ああ。
トムキャットの歌が聞こえる。
トムキャットが今現在腰を振っている。
ドンストップザミュージック。
皆さん。
最後に皆さん。
おい。アンタちゃんと撮ってるか?
撮れよ。
俺の腰ヘコをよ。
俺が終わるところをよ。
ああ。みなさん。
みなさん。こんな風になった自分をこうやって皆さんに見せるのは、忠告のためです。
皆さん、俺が、この腰が、このキヒヒ泣き笑いが、
これを見た皆さん……どうか……どうかみなさん、
腰をヘコヘコ――振るぞー!
トムキャットに乗って――振るぞー!
せぇえええの! 因習、最高ー!
腰ヘコ村レポート 羊蔵 @Yozoberg
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