第3話 ヘコヘコ
腐臭漂うパイナップル倉庫でねちゃねちゃ性交渉した。
パイナップル汁で床も壁もペタペタしてましたね。
それが汗で緩んでべちゃべちゃになる。それはそれが嫌で、尻をしばくふりして、尻で拭ってましたね。
でもとにかくパイナップルの腐臭が酒みたいに強くて、何だか途中からカブトムシの交尾やってる気分でしたね。
あ。このとき倉庫で天狗の面を見つけたんですよ。
俺、誰かが入ってきたら恥ずかしいから、これ被ってやってましたね。天狗。結果的にいうと天狗は顔に被るべきじゃなかったですけど、それはいいです。
とにかくパイナップル倉庫でカブトムシやりながら、尻の女から色々聞いたわけです。
端的にいうと、このイカれたハワイアン因習センターは、会長の息子のせいでした。
村長とか地主とか議長じゃなく会長。
何の会長なのかは、なんかヤバイ気がして聞きませんでした。リンゴ尻の女も何もいわなかったし。まあ、有力者なのは確かです。
その息子は都会の大学に行って、そのまま最近まで都会で働いていたらしいです。
それが会社を辞めて戻ってきた。
で、存在感を示そうとしたんでしょうね。
村おこし計画を発案、強引に押し切ったらしいです。
それが腰ヘコハワイアンセンターというわけ。
バカなんですかね?
バカなんでしょうね。
映画かなんかに影響されたんでしょうか。
村おこしにハワーイアン。アーンド因習。
ハワイアンに腰ヘコ踊りをブレンドしちゃった。
ハワイアン+腰ヘコですよ。
なんで?
バカだから足せば良いと思ってる。
腰ヘコっていう要素を自分では斬新だと信じ切って、そいつを入れれば評判になると思ってる。PVがつくと思ってる。
バカですよ。
会社も辞めたっていうけど、バカだから首になったか居場所がなくなるかしたんでしょうね。
ところで腰ヘコ踊りですけど、最近まで廃れてたらしい。
「こしへこ様」の御利益も、踊ると何か気持ちよくなる、程度だし、でも踊りすぎてアホになった人がいたとかって記録もらしくて、もうやめようと。
祠を祀るだけになってたらしいです。
あと鼻の折れた天狗の面と、山伏衣装、高下駄みたいなのが伝わってて、それが元の「こしへこ踊り」の正装だったらしい。
なのにバカ息子が復活させたわけです。
「愛郷精神」とかいって。「郷土愛と若い力の融合」とかいって。
「若い力」っていってもバカ息子、四十過ぎらしいですけどね。融合したのは腰ヘコとフラダンスなんですけどね。
大変だったらしいすよ。
祠潰して会館立てて。
封印されてた腰ヘコ衣装持ち出して。
『開けたんか、あの衣装箱をあけたんか』っていうのも無視ですよ。「若い力」だから。
で、祠壊した直後らしいっす。
村の若い、若いっていっても都会的には若くない若い女なんですけど、その若くないお姉さんが、おかしくなった。
牛とヤったり、夜中に山に入っていって昆虫食ったりする。
当然、年寄りたちは祟りだのと騒いだらしいんですけど、バカ息子は「ちょうどいい」っつって、その牛とやヤっちゃう、虫とか食っちゃう女を、巫女だっていって、腰ヘコ踊りのセンターに据えたんですね。
それがあの、控え室で痛み止め打ってた巫女様なわけです。
こしへこ様が憑依して踊るっていう趣向にしたかったんですね。
ただのイカれた女じゃんって思うでしょ。
俺もその時はそう思った。
でも、今では違います。
俺はマジで腰ヘコ様が憑依してると確信してますね。
そのあと実際見たけど、すごい腰さばきだったし、その踊りを見たみんなもおかしくなっていってましたからね。
バカ息子、本物の怪異をショーにしちゃったわけ。
あと、ショーに出すようにしたら、その女ちょっと正常に戻ってきたらしいです。牛とか虫とかぱっくんしなくなった。
踊りで腰ヘコ様の気持ちが慰められたのか。
俺は、ハワイアン要素のせいで神様の方がおかしくなっちゃったんだと思いますね。
だって酷いもん、ハワイアン腰ヘコ踊り。見れば分かると思いますけど。
ショーの内容?
ええ。それは今から話しますよ。
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