エピローグ

 数か月後、夜葉の刑が執行されたというニュースを見た。聞いたこともない速さだけれど、罪の大きさに加え本人が事件を詳細に語ったおかげで、速やかに調査、裁判が行われたことも大きいみたい。



 あれ以降、時間の巻き戻りは起こっていない。平凡で憂鬱な毎日を過ごしている。夜葉と話をするために、ときどき飛び降りようとも考えてしまう。今も時間が巻き戻る保証はないけれど、でもきっと時間は巻き戻るんでしょう。だって、命を絶とうとするのはあの出来事が理由で、それは私の運命ではないはずなのだから。


 ……そうよね、戻るのよね。夜葉に会いたい。会って話をしたい。あの日を繰り返していた時ほど死に恐怖がないわけではないけど、今日は珍しくそれよりも話をしたい欲の方が強い。夜葉と話ができると思えば怖くない。ベランダに出る。下を見ながら飛び降りる勇気はないかな。手すりに腰掛ける感じで後ろに倒れよう。



 月の光は、夜空を見上げた朝妃の身体と血溜まりを、静かに照らしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

目覚めの天井 @monochros

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画