【八八】〜【九二】
【八八】
ケリイは、彼女自身の魔法に自信がもてたようである。
タロも何か準備しなければと思った。しかし、今日明日の内に『剣の石』の技術を磨くというのは難しい。そう考えているとケリイが、
「新しい魔法石を探そうよ」
【八九】
例のごとく、ホテルの人に魔法石が入手出来る所があるか尋ねて、その場所へと二人で向かった。
占い師のいるショップである。
ドアを開けて入ると薄暗い、というよりかなり暗かった。目の前、タロの首下辺りまでの壁があって、ぶつかった。
「(ドドン)」
「おおッ、何なんだッ!」
「きゃッ。もう、タロー。くっつき過ぎよ」
密着してきているのは、ケリイの方ではないかとタロは思ったが、口からは出なかった。それにしても、少しだけだが恐怖感がある。暗いということだけでも、怯えてしまう自分がいる。
壁伝いに右の方へと進んで行くと、少し前に進める空間があった。しかし、また壁。今度は左の方へと進む。しばらくするとまた前に出て、右の方へ進む繰り返しだった。
「なんだって、こんな迷路みたいになってるんだろう?」
「演出じゃないかしら」
タロとケリイは、自然と腕を組む形になって、一緒に進んで行った。
「凄く静かで嫌ね。タロ、歌ってよ」
「駄目です」
「ケチね……」
やがて、光源が現れて、
「いらっしゃいませ……」
【九〇】
青白い光を発しているのは、バレーボールくらいの大きさの球体であった。その前に、四〇代くらいの女性が座っていた。カウンターになっている。
「あらあ、冒険者のアウラがあるわね」
タロが、
「すみません。こちらで……」
「何を占って差し上げましょうか? 恋愛かしら」
「いや、あ、あの……」
「いいえ、冗談よ。魔法石よね。確かに、冒険者の方には、感じられたアウラの大きさに合わせて魔法石をお分けしていたわ。でも、最近は全然入荷しなくなってね」
「そうなんですか……」
「でも、いまある一つをあなたたちにあげるわ」
占い師が一度奥の暗がりに去った後、また戻ってくる。そして両手を合わせて広げて見せた。
ケリイが、
「赤い石だ」
【小刀の石(こがたなのいし)】
赤い石ということは、魔法を使う者にとっても魔法を使わない者にとっても扱いやすい石ということである。つまり、タロが身に付けてもケリイが身に付けても良いということだ。
これが、青い石だったら、ケリイよりもタロが身に付けた方が効果的である。青い石の力は、魔法と相性が悪いから。緑の石なら、魔法と相性が良い。
「これは、小刀の石なんです。あなたたちは、私と気が合いそうな人の感じがするの。あなたたちにあげることが出来て嬉しいわ」
【九二】
ケリイが、
「ほら。腕出しなさい」
「いいんですか?」
「当然よ。あなたの魔法石を探しに来たんじゃないの」
「はい……」
タロが腕巻きを見せて、ケリイによって赤い石が嵌められた。
これで、タロの腕巻きの石は『剣の石(青)』『小刀の石(赤)』『鎧の石(赤)』となった。
「小刀の石の力で、剣の石だけの時よりも強い刃が出てくるはずよ」
まほういしの火 森下 巻々 @kankan740
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