【八二】〜【八七】

【八二】

「(バチバチバチバチ)」

 砂地に立てられた何本かの柱が、同時に電撃を受けた。


【八三】

「おみごとッ!」

 その道場のマスターの言葉の後に、ケリイは、

「何とか、使えそうね……」

 タロたちは街の外れにある道場に来ていた。魔法を身に付けたい者たちが通ってくる所らしい。この街で魔法に詳しい者は誰か、魔法を使っても良い場所は何処か、ホテルで調べてもらって、ここに来たのだった。マスターと呼ばれる代表者は、鼻の下に髭のある男性であった。


【雷(らい)】

 それにしても、凄まじい魔法である。まさか、同時に複数の柱にぶつけられるような魔法なのだとは、タロは想像していなかった。しかも、マスターの驚く表情から見て、ケリイの魔法の力は人並み以上らしい。こんな能力のある人だったとは……。

「よし。もう一度、よろしいですか?」

 マスターは、頷く。

 それを確認したケリイが暗唱し始める。

「ケリイドマジコ ノイズドヘイム ケリイドクラノ ササノドモツナ ケリイドセイソ タントドイイフ ノイズドヘイム ケリイドクラノ ササノドモツナ ケリイドセイソ タントドイイフ ノイズドヘイム ケリイドクラノ ササノドモツナ ケリイドセイソ タントドイイフ ノイズドヘイム ケリイドクラノ ササノドモツナ ケリイドセイソ タントドイイフ……」

 そして、

「雷ッ!」

「(バチバチバチバチ)」


【八五】

 呼び出し用の機器が鳴ったので、ラーメンを取りに行く。

 スーパーの或る場所は、イートイン・スペースになっていた。外に向かってはガラス張りなので、陽が差している。客席として丸テーブルと椅子が幾つも設置してある。

 幼い男の子と女の子が向き合って座っているのが見えた。

「デートかな?」

 男子大学生の友人は、

「いや、兄妹だろ」

「ああ、そうなのか」

 タロには兄妹という発想が全然無かったので、本当に目から鱗という感じなのであった。勿論、幼い子二人のデートというのは言い過ぎで、親子同士連れ立って来ているのだろうとは思ってはいたのだが……。

「しかし、やっぱりこの味だな」

「そう言えば、顔が似てるかもね」

「まだ言っているのかよ」

「うん」

「美味いだろ、これ」

「ああ、美味いよ。独特な味だよな、このラーメン……」


【八六】

 タロは、はっとした。

 ケリイの頭上の空間から発生した光が、柱に落ちている。

「おおー」

 居合わせたマスターの弟子たちも歓声を上げている。

 マスターが髭に手を遣りながら、タロに、

「素晴らしい。彼女が仲間なら心強いですねえ」

「は、はい……」


【八七】

 タロは応えながらも、友人とのかつての会話を思い出していた。スーパーのイートイン・スペースで食事をした時のことを。何故、今その場面が蘇ったのかは分からない。只、ただ、昨日のことのように思われるのは、確かだ。

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