ログ6
強くなりたかった、強くなれると思っていた。
残弾数が底をつきかけていたが、お構いなしにぶっ放す。2機のハサミツキがリックを襲う。匠にかわそうとするが、ジンルイを抱えては上手く動けない。かわすリックのソルに衝撃が走る。
小さな破裂音を発し、レインのソルが悲鳴を上げる。突き飛ばされたリックが態勢を立直し振り返る。
「にげ……」
爆発。頭部のアイセンサーが光を失い、レインが沈黙する。アームを振り上げハサミツキが迫る。ジンルイを庇うよう後ずさるが、もう奈落の縁に足がかかっている。しかし、リックの瞳からは光は失われていない。
ハサミツキの後ろで激しい爆炎が上がる。再び上がる爆炎の軌跡をたどると、上空にフライカーゴが。ズームするとアイスクリーンに映るラル機が頭部センサーを軽く3回、マニュピレーターで叩くジェスチャーをして腕を水平に振り指す。全センサーをシャットダウンするリック、白い光と音が辺りを包み込む。
1、2、3……リスタート、センサー類が息を吹き返す。高機動モードで急加速すると、床に落ちているレインのアサルトライフルをすり抜けざまに拾い上げ、下腹を滑り抜けながら、ありったけの弾丸をお見舞いする。膝を落とすヨツアシにもう1機が重なる。武装と強化装甲をパージしてフル加速すると、後方で置き土産が大爆発を起こす。
アイスクリーンにグリーンマークが灯る。残り20。赤い点灯が燃料残量を警告する。右前方の柱の影から忌々しくも見慣れたハサミが姿を表す、援護射撃を受けながら大きく湾曲してハサミを避け、さらに加速する。前方に3機のヨツアシが現れ火花が点滅すると、左肩が小さく破裂しアイスクリーンにダメージの警告表示、態勢を崩しながらも再加速する。
前後から湧き出るようにヨツアシが現れる。断続的に起こっていた破裂音が一際大きくなる。オーバーリミット、左に機体が傾きジンルイが脇から落ちる。左手を床に付き急旋回するが、Uターン出来ずフロアから飛び出す。もげる左腕、弾けるマニュピレーターがリックを追う様に落下していく。
落下地点に群がるヨツアシ。その時、奈落の底から風切り音が駆け上がる。リックのソルがフライトユニットに右腕で掴まり上昇していく、と同時に誘導弾が雨の様にヨツアシ達に降り注ぐ。
フライトカーゴに追いつくとラル機が腕を掴みリックのソルを引き上げる。
「上出来だ」
リック機の肩を叩くラル機越しに見える機械兵器の群れには、黒煙が上がっている。白い塔と共にヨツアシの上に座るジンルイが遠ざかっていく。サブモニターでそれを見つめるリックの耳には、あの歌が微かに流れている。そんな気がした。
キャロットウォー 三夏ふみ @BUNZI
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