ログ5
何事もなかったかのように場違いな歌が微かに響き、箱は奈落の暗闇から逃れるように上昇していく。
「それは、あのジンルイなのか?もしそれが本当なら、俺達を作ったのはそいつってことになる」
静かに上昇していく箱。
「ジンルイなんて
「詳しい話は私も聞かされていない。だが、間違いなくそれはジンルイで、我々にとっては希望になりうるものだ」
両機は向かい合ったまま沈黙する、尚も上昇する箱、相変わらず小さな歌声が響いている。
衝撃と鈍い金属音、箱がゆれ薄暗い照明が点滅する。聞き慣れた作動音に続き、見慣れたハサミ型のアームが天井を突き破る。照明が激しく点滅する。
ありったけの銃弾を天井目掛けて撃ちまくる2機、一度引っ込んだハサミが再び天井を突き破る。上昇こそ止まらないものの、半壊した天井からはむき出しの配線が火花を散らし垂れ下がっている。尚も続くハサミの攻撃に態勢を低くして応戦していたリックは、虎の子の誘導弾を2発、発射する。穴の空いた天井に吸い込まれる様に消える誘導弾、衝撃が起こり箱が大きく揺れる。
命中したのか、天井からの攻撃が止む。安堵しジンルイを確認すると急に回りが明るく照らされる。奈落からの脱出。どうやら地下の階層から抜けたようだ。尚も上昇していく。ゆれる箱、グラつく2機の目の前、扉のない入口からハサミツキが現れる。火を吹くライフル、しかし、激しい火花とは裏腹にハサミツキの侵入を阻止するのは容易では無い。
リックはライフルの引き金を引きながら、もう片方の手で天井の穴とジンルイを交互に指さした。その行動の意図を察して、レインがジンルイを抱えるとリックの機体を足場にして、天井の穴に放り投げ、自分も軽く飛んで穴へとよじ登る。リックはライフルで応戦しつつ残りの誘導弾を発射、ハサミツキが怯んだ隙にホバーユニットの出力全開で飛び上がり、レインが差し出した腕に掴まり穴へとよじ登る。
天井上から見上げると、終点が見えた。このまま行けば終点と箱に挟まれて一巻の終わりだ。半壊したハサミツキがこちらに向き直り渾身の一撃を振り上げる。穴から室内に向け発砲するリック。箱が大きく揺れ上昇を停止しすると、今度は一気に落下する。箱と共に落ちていくハサミツキ。
アンカーワイヤーで梁にぶら下がっているリックとレイン。ジンルイはリックの脇に抱えられている。ワイヤーを巻き取り、フロアらしき所になんとかたどり着く。と、そこには新たに2機のハサミツキが待ち構えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます