第16話
応援合戦の服装は特に決まったものはない
去年は祭りで使う半被で今回は学ランらしい。なんで学ランなのかは、多分団長の趣味だと思う。
「それが紅組の衣装ですか?先輩?」
「え?」
振り向くとチアガールがそこにいた。
比喩とかではなく、本当にチアの衣装を着ている黒崎さんがいた。
「なんでここに。それ…。」
「さっき入るところを見ましてね。これは私達、白組の衣装ですよ。団長を除いてほぼ女子ですからね。似合うでしょう?」
自信満々にいうだけのことはある。
似合うどころか、ハマりすぎである。
でも。
「それ、本番で着るわけ?」
「そうですよ?」
へそ出し。
袖なしの肩出し。
短いスカート。
私立高校だけどよくこんな衣装を学校が許可したものだ。
露出が激しいにもほどがある。体育祭なのに。
「あれあれぇ?先輩、言葉も出ませんか?これなら白組の勝ちですかね?」
なんだかこの間のデートから変だ。
いつもなら彼女の挑発に対して悪態くらい簡単につけるのに。
言葉なんて出ない。
だって、こんなにも可愛いのに本番に着るとか。周りに見せつけるようなものだろう?
そんなのって…。
「これから暑くなるけど、それでも風邪引くから早く着替えた方がいい。」
かろうじて出た言葉だった。
とにかく早く着替えてほしい。ここだって誰が見ているのか分からないのだ。
「そう、似合わないってことですか。」
「えっ。」
「結構スタイルとか外見は自信あるのですけど。先輩にはそう見えないってことですね。」
「そういうわけじゃ…。」
しまった。
何か誤解されている、絶対に。
「すみません、そうとも知らず。本当の恋人ではないのだからもっと自重すべきでした。」
急に口調が丁寧になっていってる。
これはマズイ。
でもこんなところで着ていてほしいわけじゃないからどういえば分からない。
「まだ練習がありますので、これで失礼します。」
「いや、待って!」
そうは言ったが、待ってくれなかった。
でも追いかけたところでどう言えばわからないし。
「やらかしたことだけは分かる。」
体育祭、通常通りにはならなさそうだ。
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