教皇としての二度目の人生を終えて三度目はのんびりしようと思ったけど無理そうなので異世界を統一します。

リアス

俺、異世界で教皇になる。

やぁみんな、俺だぁ!二十五歳で現在進行形のヒキニートの俺だぁ!

デブでブスの見た目と性格で親にも兄妹にも嫌われて、付いたあだ名はクズキングだ!

そんな清々しい悪口の数々も俺からしたら痛くも痒くもねぇ。

そんなクズキングの俺も轢かれそうな人間を助けるために命を捨てたのだ。

こんな俺でもやっぱ人間か。


そこで意識は途絶えた…


って一回やってみたいと思ってたんだよねー!俺は目が覚めると、異世界転生ものでよくある神様のいる待機場の様な所に立っていた。


「ふっ、俺を選ぶとは流石じゃねえか!神はやっぱりよく分かってるじゃねぇか!」


カッコいい決めゼリフとポーズを決めてみたがその声は虚しく、ただ静寂が広がるだけだった。


「俺を無視するとは良い度胸じゃないか。」

「…はぁ、呼ぶ人間違えましたかね。」


それは身長が二.五メートルはありそうな狙ってるだろーって思うぐらいのうっすいほんっとにうっすーいヒラヒラーってしたやつを着た女神が降りてきた。

やべぇ、こんな引き締まった体では信じられないぐらいのアレを付けてやがる。うひょ、こんなデカさエロゲーでも中々見ねぇぞ。

おおっと、失敬。紳士がこんな事を考えてはいけないな!


「いやいやいや、間違ってねぇ!そう絶対!」

「神に対してそんな破廉恥な目を向けてくる人は初めてですけどね。」


でっかい胸を隠す様に抱きしめる。さては狙ってるのか?

もしかして俺一目惚れされ...心を読めるのか知らないがそんな目で見るなよ。俺が何かに目覚めたらどうしてくれるんだ!


「ふん、まぁどうとでも思っていても関係ないですよ。貴方には異世界に強制連行させてもらうんですから。」


…ん?連行?随分と物騒な言いようだな。


その瞬間首に冷たい感触が伝わる。

これは、首輪...

気づいた時にはもう遅かった。身体が徐々に動かなくなっていく。

腕と足にも錠前がかけられて身動きが取れなくなった。動け、動け、そう何度念じても手は微動だにしない。最終的に首から下の感覚は全て消えてしまっていた。


本当の異世界転生がイメージしてるチート貰えるそんなんとはかけ離れてるとかふざけんじゃねぇぞ!嘘ついてんじゃねえぞラノベめ!帰ってエロゲーも山ほど残ってるし漫画も読み切ってない物も山ほどあるんだぞ!


「おい!なんで人の事を助けて死んだのにこんな事されなきゃ行けないんだ!」

「ふ、異世界からの供給の代償が貴方みたいな社会のクズで良かったですよ。理由は〜そこら辺でふよふよしてたのを捕まえただけですし?可哀想とも思いません。お願いですから早く死んで下さいね?」


そう言い放った女神が俺をめっちゃニコォってしながら全力で蹴り飛ばしたのが始まりだった。


まぁ、人助けして死んだのにこんな扱いされた上に落ちた世界は散々だったんだぜ?

俺は親のすね齧ってたニートだったから運動も全然しないで太ってたしさ、取り敢えず生活をする為の最低限の金を稼ぐ為にダイエットをしようとしたんだ。


しっかしこれまた最高な事に顔面至上主義のこの世界はは最初に検問通る時が本当に辛いんだよ!毎回魔族に間違われて殺されかけるって言うね。ハッハッハ。泣けてくるよ、こんな素で魔族に間違われるなんて、映画男優賞も夢じゃあねなぁ!…気にしないでくれ。

それに通る道は毎回野盗がいるしさ、

しかも俺は異世界の転生者だから魔力は無いんだってよ!

だから俺は昔習ってた剣を鍛え続けてさ、剣神って言う称号まで手に入れたんだよ!

だから、さ。苦労して十数年かけて貯めた金でようやく建てた家が燃えたからさ、あのクソ女神!ってキレてたんだよ...本当に辛ぇよ。


でも、これが無かったらで師匠にお会いする事ができ無かったし、これもまた運命なのかも知れない


しかし、この世界で暮らしていて実に興味深い事に気づいた。

この世界には宗教、神などの神仏の概念が存在しておらず、天国や地獄などと言ったものも存在していなかった。

死んだらお終い。そんな考えらしい。

それなのに死については誰も深く考えていない。それが異世界から来た人間としてはその楽観的な考え方が少し不気味に感じた。

その時私は閃いたのだ。地球で確か一番偉かった人物は法皇といった宗教関係の人間だったはず。

それにいつまで経っても神に対して反発しているだけではいけない、神に贖罪をしなければと。

そして私はこの世界で初めての宗教を始めた。沢山努力をして、地球の技術を元に色んな発明もした。私のせいで沢山人が死んだりもしたが、信者も沢山増え今や一つの帝国を支配する王族へとなった。


そして、今そんな私は2度目の人生の幕を閉じようとしていた。


「教皇様!」「教皇様!」「教皇様!」「教皇様!」


付き添いの子達が私へ必死に呼びかける。

あぁ、神よ、私に最後の別れをする時間をお与えください。


「そんな!今日ぐらいはお休みください!

無理に動かれては御身体に触ります!」

「どうせもう死ぬ老人に、っそんな事を気にかけてどうする。ほらっ、チャペルたちよ、ついておいで。」


私はチャペルと呼ばれる特に重要な5人の弟子に支えてもらいながら廊下を歩いていく。


「この人生で、お前達と会えて、本当に良かったよ。」

「私達もです!貴方がいなければ私達全員とっくに死んでしました!」

「私が死んだ後、私の地下室にある物は、全て技術としてっ、公開しなさい。ただし、そこにあるノートだけは、焼却しなさい。それは人類がっ、手にするには、うっまだ早すぎる物だ。」

「…了解しました。」


彼等に最後の命令を下した後、私が国王に即位した帝国広場に到着した。


「スピーカーを」「はっ」


渡されたスピーカーの電源をオンにすると身体の痛みと息苦しさを押し殺しながら私はゆっくりと話し始めた。


「皆さんにする、このお話は、今日で最後だと、思います。だからこそ、最後、言いたかった事を、言わせて、もらいます。」


こちらの方には沢山の人が話を聞こうと集まってくる。

全く良い人たちだ。私は神を破廉恥な目で見たようなゲスなのに。何万という人の命を奪った奴が。前世でもクズキングって呼ばれたりしたか。


「いずれ、私達の存在は、幾千の時を経て、忘れさられる事でしょう。それでも私達は今、確かに生きているのです。」


これまで出会ってきた人たちの事が思い出される。悪い人もいた、良い人もいた、それでもみんな死ぬ時は辛そうな顔をしていた。


「生きていれば、苦しい事も辛いことも、死にたいと思う事だって、あるでしょう。しかし、生きていれば良い事も沢山ありますし、努力して、皆に笑って見守られながらっ、神の元へと送ってもらう。

死んだらおしまい?はは、そんな事はありません。最後まで、見守って下さった神に、笑って幸せでしたと、そう言えるような。そんな人生を、皆さんが送れることを祈っております。」


最後に中央広場の女神像に祈りを捧げた。

貴方に捧げたこの人生。辛いこともあったけれど、とても楽しませてもらいました。

そして、私の人生は2度目の幕を閉じたのだった。



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