第89-2話 大河②
———Bメロ……なんだかドラムのリズムがオリジナルと違う……普段、大地は殆どアレンジして来ないんだが……珍しく大地が自分の存在を主張しているようだ……。
”ティリティリティリティリティリ♫キャキャキャキャ♪ギャ―――♫ギャキュ♫……
ギターもドラムのアドリブに戸惑うこと無くついて行ってるが……。
「大河、なんとかついて行ってるけどもう音がギリギリだよ……しかも葉倉さんまだ余裕あるじゃん!! ……凄い……何? この前のライブと全然違うじゃん」
「だから言ったろ? 毎回違うって。練習も意味ないってな」
「うわぁ……この後私弾くの? ちょっとヤバいね」
「♫♬♫♬―♩―♪―♬♪♩♩――♪……
そして曲はサビに入った……すると!
”ドコド♪
ドコド♫
ドコド♬
シャン♪”
”ドコド♪
ドコド♫
ドコド♬
シャン♪”
”ドコド♪
ドコド♫
ドコド♬
シャン♪――――
nIPPiはサビで更にギアを一つ上げた! そしてドラム……ドラムがいつもと様子が違う……Bメロでもそうだが、大地が珍しく主張し続けている……
「正吾君、なんかドラム変だよ? 大地君どうしたの?」
「大地……もしかして怒ってるのか?」
「え?」
そしてここからギターソロ!――――を、ドラムが奪った!
”ダンダダンドコシャン♪ダンダダンドコ
ドドッドドッダットンダカダカ…………
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!」
観客はドラムのソロに更にボルテージを上げた! すると今度は―――
”♬♬―♩―――♫♫♩♫♩♫――♩――”
”――♬♬―♩―――♫♩♫♩♫――♩”
陽葵だ! ドラムのソロに陽葵が割り込んで入ってきた!
「希乃さん凄い……このドラムに合わせてくるなんて……ん? んん? ねぇ、これって……ドラムとキーボード、バトルしてない?」
”ドッダン―ドドシャン♪ダダトコドドドド♬ドシャンド……
”♪―♩♫♪――♫♬♪♪♪♪♬―――♪♩♪―――
「あ、マジだ。大地の熱量と観客のボルテージに今度は陽葵が当てられた。ヤバい、陽葵の口元……狂気的な笑顔になってるぞ!」
「てか、何これ? ドラムとキーボードでバトルって……しかもライブ中だよ? これ駄目なやつだよね?」
「去年の文化祭の再現だな」
「え?」
「去年、俺と陽葵でバトって、後で丹菜にこっぴどく怒られた」
「ちょっとあんた達、まともに演奏するつもり無いでしょ?」
「はは……あ―――完全にギターの存在忘れてんな。あ……大河……手が止まったぞ」
丹菜が大河が演奏を止めたことに気が付いたようだ。大河に向けて何やらゼスチャーしてる……多分、間奏そろそろ止めるから準備しろって言ってるのかな?
「Hhhhhhiiiii―――――――――――――――――――――…」
丹菜が割り込んでソロは終わった。しかしギターの手は二度と動くことは無かった……完全に白旗を揚げたようだ。そして観客はギターの音が無い事に気付いてない……完全に大河の負けだ。
そしてギターの音が鳴ること無く一曲目が終わった……。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!」」
波奈々が唖然とした表情で俺に語りかけてきた。
「凄い……何これ……全然……全然動画と……この前のライブとも違うじゃ無い……ねぇ、私、今からここに入るの? ちょっとやばい……」
「止めるか?」
「ううん……やってみるよ アハ♪」
すると、ステージから大河が戻ってきた。
「俺じゃ駄目だった。ハイスペックスは手に余る……狂気だよ」
「でしょ? 私達だってギリギリなんだもん」
ノンノノも袖に降りてきた。
「じゃ浅原さん、次頑張ってねー。会場、温めておいたから」
「はは♪ ちょっと熱過ぎだよ」
そう言って波奈々と俺はステージに駆け上がった。
―――――――――
大河視点はこちら↓↓↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330652481630911/episodes/16817330654594994781
小説「全然バンドとか興味無いのに正体隠して生活してる隣の部屋のギタリストとカラオケ行ったらバンドのボーカルに誘われて私まで正体隠すようになった。」です。
タップ、クリックすれば向こうの小説の第89話に飛ぶ筈です。変なサイトじゃないですよ。
小説そのものは「葉倉丹菜」視点で書かれています。正吾の思考の裏側で丹菜が何を思っているかが描かれています。
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