第89話 浅原大河 ①

 僕の名前は浅原大河。二学期からこの高校に編入してきた言わば転校生だ。


 正直僕はモテる。以前の学校でもモテまくった。モテまくってヤリまくった。

 僕がギターを弾くのもバンドをやってるのもモテるからだ。それ以外に何もない。

 この学校に転校早々、可愛い子を見つけた。希乃陽葵だ。葉倉丹菜もいいが、おっぱいの差で希乃陽葵に軍配が上がった。なので僕はこの子を落とす事に決めた。手始めに僕の手足となる駒が欲しい。そのために最初に僕がすること……それは、「男女問わず徹底的に尽くす」。自分を犠牲にしてまでも「尽くし通す」。すると「恩を返さなきゃって」思う気持ちが強くなり僕の言う些細なお願い事を聞き始める。些細な願いも少しずつ大きな願いして感覚を麻痺させる。すると僕の言う事に従い始める。そうなったらこっちのもんだ。

 僕は女を取っ替え引っ替え食ってるって噂が流れているが、事実だ。否定はしない。尤も相手に同意を求めてやってんだから文句は言われたくない。因みにクラスの子も食ってるがバラしたら二度と抱かないって事で秘密を通している。でも噂が広まった。噂を広めたのは多分……波奈々だろうな。


 そして希乃陽葵を口説き落とす為、女共をけしかけた。彼女の心に揺らぎが出ればそれは『隙』だ。それが見えた瞬間僕の勝ちは確定するが……希乃陽葵の気持ちは全く揺らぐ事はなかった。そして持ちかけられた勝負。


 今、ハイスペックスとステージに上がっている。コイツらと最後まで演奏できれば僕は晴れて希乃陽葵を食う事が出来るわけだ。コイツら皆冴え無い男ばっかだ。余裕だろ?


 みんなはローブを羽織ってフードを被っている。僕だけが素顔のままだ。それは望んでそうしている。目立つのは好きだからね。

 ステージに上がった僕を見て、会場から色んな声が聞こえる。


「浅原、マジで出んのかよ!」

「キャー♡ 浅原君カッコいい♡」

「最後まで弾けたらハイスペックスのメンバーになれるんでしょ?」

「違うって、希乃さんが彼女になるんだよ」

「その希乃さんって何処行ったの?」


 リーダーのskyがマイクを持った。


「皆さんこんにちは、ハイスペックスです キメッ」


 みんな同じポーズを取っている。なんだこのポーズ。僕は聞いてないぞ⁈

 袖に目をやるとトゥエルブが御免って手を合わせて謝っていた。


「今日はゲストを二人お招きして居ます。まず一人目ギターの大河」


“ギュィーン、ティロリラ、ティラララ、ギュイギャッ”


 僕は名前を呼ばれてギターを軽く鳴らした。すると、


「「おおおおぉぉぉぉ!」」

「結構行けんじゃん」

「大河やるな」

「キャー♡ 浅原君カッコいい♡」


「そしてもう一人は二曲目に登場します。じゃあ、時間もないので一曲目!」


“カッカッカ♪ ディクトン♪———

 ”—♫♪—♪—♫—♪♫—……


 ライブが始まった。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!」


 観客のボルテージは初っ端から最高潮だ!ここまでのハイテンションは今まで経験が無い! 凄げぇなハイスペックス!

 僕はいつもどおりギターを鳴らすが……なんか皆の音に僕の音が消されている?


「♫♫♫♫—♪—♪—♫—♩—♩♫……


 前奏が終わりAメロに入った……いきなり凄い! nIPPiの歌声……数回スタジオ(大宮楽器店とは違うところ)で練習したけど全然違う。言ってたとおりだ。練習した意味が全く無い。なんだこれ?


 ”ジャッジャッ♫ジャジャジャッジャ♪ジャッジャッ♪ジャジャジャッジャ♫“


 僕は声に負けないように演奏するが……「バンド殺し」……この異名は伊達じゃなかった。音量が大きいとかじゃない。これが「熱量」ってやつなのか? 他のメンバーを見るとノンノノを始め、皆いつもどおり演奏している……いや、何かがいつもと違っている。技術とかじゃ無い……皆も「熱量」ってやつを乗せているのか?


 そして曲はBメロに入ったが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る