坂本君はイヂワル
私と晴彦は、あれから一切目が合わない。…私が勝手に逸らし続けてる、と言った方が正しい。あの時、晴彦は、何も言わず、微笑んだ。なんで、優しかったんだろう?なんで、晴彦って呼ばせたんだろう?なんで、視界に入って来たんだろう?なんで、…なんで、髪の毛を…触ったりなんか…。
私は、そんな事ばかり考えていた。怖かった。もう一度、また、もう一度晴彦に目をやって、逸らされたら…。そうしたら、何もかも嘘になる。幻になる。私が見ていたのは、晴彦じゃなくなる。でも、晴彦にしたら、もう、あの時、私は嘘になって、幻になって、晴彦が見ていたのは、薫じゃなくなったのかも知れない。そう思うと、私は、とてつもなく哀しくなった。
「…また…」
まただ。また、晴彦のリーダーのノートが提出されていない。もう、三日待った。今日こそ、提出させないと、私が先生に怒られる。でも、どんな顔で晴彦に話しかければいいのか…。私は、どうしても一番仲の良い男子を、一番遠く感じていた。そして、私は、捨てる覚悟をした。
「坂本君、リーダーのノート、出して」
「…」
「もう…待てないから」
「…うん」
素直に、言い訳もせず、あっさりノートを晴彦は差し出した。
(あぁ…晴彦も、私を、捨てたんだ…)
そう…思ったのに…。
「薫、俺たち、友達だよな?」
なんて…哀しい響き…。
「…呼び捨てにしないで。…友達だなんて…言わないで…」
「薫…」
「坂本君、ホント、イヂワルだよね」
私は、笑った。
イヂワルなあなたが、こんなに好き。
坂本晴彦はイヂワル 涼 @m-amiya
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