第2話 水野の珍解答
「じゃあ晴子は他っておいて次に行こう。誰行く?」
「じゃ、俺。山田の後だとダメージ少なそうだし」
ぴしっと手を挙げたのは水野だった。
その言葉は冷酷なほど山田の心に刺さったのか、床に転がっていた彼女からうめき声が上がった。
「お前、ずりぃ」
「賢いって言ってくれな」
抗議の声を上げたのは比和野だったが水野が答案用紙を置いたことで黙るしかなくなる。
なるべくダメージが少ないところを狙いたいのは彼も同じだったようだが、それでも他人に自分の珍解答を見られるというのは心の準備が必要なのだ。
水野は急に押し黙り、部屋は再び重苦しい空気に満たされていく。
水野康介の珍解答
科目:日本史
問題:豊臣秀吉の邸宅として作られ、後陽成天皇の行幸も行われた建築物の名前を答えよ
答:
水野の答え:
「ふっ……そこに、兄はおるんか」
「あっはは!! どこよ兄」
「聚楽弟ってなんか人の呼ばれ方みたい」
いつの間にか復活していた山田も加わり一斉にツッコミが入る。
某CMのようなリズムで尋ねる比和野は完全に悪役面をしていた。
「うるせぇ~~~!! 書き間違えたんだよ!! 竹冠忘れたの! ほぼ合ってるだろうが」
顔を赤くして、汗まで滲んでいる。
相当恥ずかしいようだ。
だが、そんなこと知ったことかと3人は弄るのをやめない。
「合ってないし、全然別物だよこれは」
「誰ですか弟」
「建築物って言ってるのにね。「あれは下駄箱ですか? いいえあれはペリーです」くらい違うんだよね」
特に山田からのいじりは鋭かった。
「これが合ってるっていうんだったらもう水野のこと水野弟って呼ぶわ」
「うるせぇ~~~!!!」
赤かった顔をにやにやとしたものに変えながら言う山田に、今度は水野が床に伏してしまった。
脱落者二人目である。
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