第7話 俺の話
なにさ。あんた。笑ってるだろ。いいよ笑って。そりゃあんたからしたら笑っちゃうことだもんね。鞄に放り込まれて、さぁ、いざと思ったら、あの子いないんだもん。俺だけ仕事場に行ってどうすんのさ。知らない奴ばっかりだし。
あ、そういや、いい話あった。あった。ほら、前のあいつ、前の新顔。ほら、白山の白い星型のマークついたやつ。何? 白山じゃなくてモンブランだろうって。あんた、自分も白山って言ってるのに、どうしたのさ。
フランス語でMont Blanc、Montは山でBlancは白だから白山だよ。そのままだよ。ヨーロッパアルプスの最高峰、天辺真っ白な綺麗な山なんだって。俺も見てみたいなぁ。
じゃなくて。あいつがいたの。なんか、本当は他所の子でさ。その家のご主人に、あまり気に入ってもらえなかったんだって。今度はこの仕事場で、先輩みたいに気に入ってもらえるように頑張りますって。なんか初々しくて良かった。俺の後輩だよ。後輩だ。ちょっとうれしいな。
あいつは仕事場にいるみたいだよ? え、あ、あの子と一緒じゃないかって。うあぁぁ、おれが家にいる間に、あいつとあの子が仲良くなったらどうしよう。どうしよう。ねぇあんた、どうしたらいい。
そんな面倒くさそうな顔しないで、一緒に考えてよ。俺とあんたの仲だろう。ねぇ、ちょっと。あ、ちょっとまってよ。
<おしまい>
ちょっと俺の話聞いてくれる? 海堂 岬 @KaidoMisaki
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