　———そして四人の演奏のままＡメロに戻る……ギターが少しオリジナルからはみ出し始めた。それに合わせてキーボードもギターをフォローするように音を重ねてきた―――その音が二人肩を寄せ合ってるように聴こえて何だかで嫉妬した。

　私はサビでその嫉妬の気持ちを声に乗せてしまった。　———しかも全力で！

「♫♬♫♬―♩―♪―♬♪♩♩――♪……」

　”ﾃﾚﾃﾚﾃｨﾚﾃｨﾚﾃﾚﾃﾚﾃｨﾚﾃｨﾘﾘﾚ♫ｷﾞｭｧｰﾝｷﾞｬｷﾞｬｷﾞｬｷﾞｬ♪ﾃｨﾃｨﾃｨﾃ……”

　突然の私のヒートアップにギターが辛うじて付いてきた。トゥエルブの顔が「ヤベー！」って顔になってる。

　浅原さんに目を向けると、顔が引き攣りながらなんとか付いてきている。

　―――そしてここからキーボードのソロパート……だけど、

　”パパンピパパン♪　ピピピピピパペパン♪……

　”ﾁｭｲｰﾝ――ﾃｭﾚﾃｭﾚﾃｨﾚﾘﾗﾃｨﾚﾘﾗ♪ｷﾞｬｯｷﾞｬｼﾞｬｶﾞｼﾞｬﾝ♫……

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ！！！！！！！！」」

　そのままギターとキーボードが間奏に入った。観客のボルテージは上がりまくりだ！　

　なんか二人の世界作ってない？　良く聞くと、ギターがキーボードをエスコートしているようにも聞こえる。私はなんか無性に腹が立ってきて、思わず邪魔をしてしまった。

「Fhiiiiiiiiiiii――――――Phaaaaaaaaaaaa――――――……

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ！！！！！！！！」」

　私の声に客席の熱気が再び上がる。

　トゥエルブに目をやると顔が焦っている。完全に「キツい！」って顔が言ってる。指が限界のようだ。そして、私は声を出したまま浅原さんに目を向けると、彼女ももう手が止まりそうな感じだ。ちょっと熱を当てすぎたか？

　”ダン！　ダダン！　ドコ……”

　すると、珍しく、ドラムの音が「いい加減にしろ！」って言ってる。私達を止めに入ったようだ。

　いつもは私の役目なのにね———。

　———頭もクールダウンして、曲もオリジナルに戻り、そして曲は終了した。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ！！！！！！！！」」

　観客は盛り上がっている。そして浅原さんに目を向けると、息を切らせ床に座り込んでた。顔も上気してなんだか満足げな……。

　―――――――――

　波奈々視点はこちら↓↓↓

　小説「正体を隠して生活してる俺の隣に住んでる美少女とカラオケ行ったらとんでも無い才能の持ち主だったからバンドのボーカルに誘った。」です。

　小説そのものは「御前正吾」視点で書かれています。丹菜の思考の裏側で正吾が何を思っているかが描かれています。

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