第12話後日談
こうして我々は取材と調査で得た情報を元にドキュメンタリーを作成・編集し、無事に放映された。
最後の編集を終えた日の午後十一時、風呂から上がってきたばかりの椿の元に電話がかかってきた。
「もしもし?」
「椿さんですか?こんな時間にすみません」
相手は朝美だった。
「どうしたんだ?」
「火災が発生しました」
「何!?まさかうちのスタッフルームが!?」
「いいえ、例の事故物件です。ニュース速報でやっています。」
椿はテレビをつけた、すると速報であの事故物件が火災になったというニュースが報じられていた。
「本当だ・・・!」
その後椿は「明日、現場に行ってみる。来る時間遅くなるって、伝えておいて!」と朝美に告げて、就寝した。
翌朝午前六時、椿は自宅から例の事故物件へ車を走らせた。
昨日の速報によると、出火したのは午後十時ごろで、出火は二階の部屋からだという。
現場に到着すると、規制テープが事故物件の周囲に張り巡らされ、パトカーや消防車が近くに停まって、現場の捜査が進められていた。
「こりゃ、ヒドイな・・」
椿が上を見上げていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「あんた、確か椿さんでしたかな?」
それは隣人の愛宕さんだった。
「愛宕さん、火事は大丈夫でしたか?火が燃え移りませんでしたか?」
「幸い大丈夫じゃ、しかし火事になったことはとても驚いたよ。消防に通報したのは私だ。」
愛宕さんによると、昨夜の午後十時三十分ごろに就寝しようと消灯したら、窓がオレンジに明るくなっていた。気になって窓を開けたら、隣の家の二階が燃えていたので消防に通報したという。
「それにしても、一体なぜ二階から火が出たんだ・・・?」
あの物件は空き家でそもそも電気とガスは停まっている。放火の可能性にしろ誰が何の目的で、しかもなぜわざわざ二階に火を着けたのか?
椿が首を捻っていると、愛宕さんが呟いた。
「あの時も・・・」
「なんですか、あの時もって?」
愛宕さんは苦い思い出を思い出したような、複雑な表情で椿に話した。
「実は春子ちゃんが生きていた時にな、春子ちゃんが私の庭で火遊びをしていたのを見たんじゃよ。慌てて止めさせて、春子ちゃんの家に苦情を言ったんだ。その三ヶ月後にあの火事が起きてな、その時も出火場所は二階だったよ。」
その言葉を聞いて、椿は自身の想像に戦慄した・・・。
あの物件で撮影していた時、カメラが止まる直前に映った、春子ちゃんの霊が廊下で不自然な動きをし、それを見た母親の霊がそれを慌てて止めていた。
それは春子ちゃんの火遊びを止める母親の光景だったというのか・・・?
数ヵ月後に事故物件は取り壊され、それっきり家が建てられることなく更地になっているという・・
現実超常ドキュメンタリー特派員・事故物件の子ども会 読天文之 @AMAGATA
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