終章

幕間3

 風花ちゃんと小山さんがお付き合いすることになったらしい。


 部活動の休憩中、わたしは今日風花ちゃんと小山さんと話したことをずっと思い返していた。


 昨日の放課後、風花ちゃんは小山さんの家に行って想いを伝えたそうだ。その行動力にもびっくりしたけど、小山さんの勘違いにはもっと驚いちゃった。平和に収まってよかったけどね。


 全部勘違いで平和に終わって、風花ちゃんも幸せそうで、わたしももう悩むことなんてないはず、なんだけどな。


 なんでわたしは今こんなに、寂しい気持ちになってるんだろう。


 風花ちゃんといるときの小山さんの鮮やかなを見ていると、胸が苦しくなる。風花ちゃんも小山さんにあんな色を向けているんだと思うと、泣きそうになる。


 風花ちゃんは間違いなくわたしの一番で、でも風花ちゃんの一番はわたしじゃない。


 友達と、恋人。形が違うのだから、そんなの関係ないって思ってたのになぁ。


 わたしは自分の心が見えないってことを、今さら思い出した。自分の思いが友愛だって、そんな確証は全くないってことに、今さら気づいた。


「はぁ……」


 風花ちゃんにも相談できない悩みができちゃった。

 梨央先輩への憧憬も呪いみたいに消えてくれないし、ほんとなんなんだろう。


 風花ちゃんと最初出会ったとき、運命だと思った。


 神様がわたしのために用意してくれた希望だって、そう信じていた。


 そして風花ちゃんは、本当にわたしの支えになってくれた。解決はしなかったけど、唯一心を預けられる場所ができた。


 趣味だって同じで、話してると楽しくて、本当にわたしのために生まれてきたんじゃないかって思っちゃうぐらいだった。


 けど、全然そんなことはなくて。


 風花ちゃんが陸上部じゃなくて文芸部を選んだ時に気づくべきだったんだ。これは運命なんかじゃないって。


 風花ちゃんにとっての運命は、小山さんだったんだって。


 神様はこの先に、明るい未来なんて用意してくれていない。


 わたし、神様に悪いことでもしちゃったかな。心当たりはないけど、多分そうなんだろうな。


 そんなふうに諦めて、これからの未来に新しい希望を探すしかない。


 風花ちゃんが幸せでいてくれていることだけが、唯一の救いだ。わたしの分まで幸せにしていてくれないと困る。


 わたしは休憩を終えると、梨央先輩の方を見ないようにしながらグラウンドの周回に戻って行った。

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