ぼくの世界観

@karakkiri

ぼくの世界観

 少年はいじめを受けていた。最初はものを隠されたり、消しカスを投げられたりする程度のものだった。しかしいじめはエスカレートするもの。上履きの中に画鋲が入っていたり階段から突き落とされたりするなどの暴行を受けた。

 少年は幼いながらも確信していた。自分の人生がいかにちっぽけなものなのかを。屋上へ向かい足早にフェンスへ向かう。何度も練習したので簡単に縁までたどり着くことができた。今までのことを振り返り、遺書を地面に置く。風で飛んで行かないように靴を脱ぎそれの上に置く。

 -お父さんお母さん今までありがとう。本当はぼく、いじめられてたんだ。-

 書き出しはばっちりだ。あとは飛ぶだけ。これで辛い日々ともおさらばだ。

 そう思いながらいざ屋上から落ちようとした瞬間、とある少女に呼び止められた。確か同じクラスの子だ。しかし名前は知らない。いや、わからないのだ。少女はなぜ落ちようとしているのか聞いた。少年は自由を邪魔されたせいか、少し苛立ち混じりで答えた。少女は話をしようと提案してくる。どうせ死ぬのならば最期ぐらいは可愛い子と話がしたいと考えた少年は仕方のない様子を装いながら少女の元へ駆け寄った。

 それから少年は少女の質問に全て答えていった。まだかな。話しているときの少女の顔はまるで、自分がそうされているときのように怒ったり、ときに涙を流したりしていた。少年はそんな表情の豊かな少女に惹かれていった。それと同時に、自分の話をここまでよく聞いてくれた人の少なさを実感した。

      少年は自○をやめた。

 その後はその少女と共にたくさんの楽しい日々を過ごした。運動会に夏祭り、文化祭や休日など、様々な時を過ごした。行事を重ねていくごとに友人と言える人も何人かできた。少年は少女と同じ高校を志望した。結果はもちろん合格。楽しい高校生活が始まった。もうそろそろだ。少年は勇気を振り絞り、少女へ告白した。当然okをもらった即答で。少年は涙を流した。今まで経験してきた辛い過去も、この少女と出会うためにあったのだと。よし、あと少し。そんな幸せな日々を少年は夢見ていた。


   髪を靡かせるのは垂直の風だった。

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