少し前に「作家は体験したことしか書けない」というネタがTwitterで流行ったが、この物語に登場する画師は自分の目で見たものを写し取ることで壮絶な地獄絵を描く男である。
例え人の道を踏み外そうとも、目の前で繰り広げられる紛うことなき地獄は、身の内を焼き尽くすほどの激烈な葛藤で以てこそ、描き表すことのできるものだったのかもしれない。
本作を最初に読んだのは高校生の頃だったが、日常的に創作するようになった今、再読して改めて実感する。これほどまでの思いをして作品を完成させたら、後はもう死ぬしかないだろうな、と。人としても、画師としても、だ。きっとこれ以上は、ないだろうから。