第8話 『出立』

「まずは不要な暴言、態度、扱いの数々深くお詫びする。申し訳なかった」


イレインこと、翡翠の女王は深く頭を下げてきた。


「いいよ、もう気にしてない。しっかし、お前ら役者かよっての」


「重ねてこちらもお詫びするわ、女王はあなたの力を推し量っていたのよ。通過儀礼と思って頂戴」


「余とゲールだけ除け者で一芝居打つとは何故か?」


「あなた達二人はそういうの苦手でしょ。アミスは役者志望だから問題ないと思って」


「アミス、演技上手だったでしょ。伽耶はちょっぴり漏らしてたしね」


「て、適当言うでないわ。ちょっぴりなら問題ないじゃろ......」


イレインはメイド達を落ち着かせると手を叩き、晩餐の指示を出す。


「奥の広間に食事の用意がある。遠慮なく食べてくれ」


テーブルから落ちそうなほど豪華絢爛な料理が立ち並び、アラビア衣装に着替えたメイド達は踊り狂い、飲めや食えやの大騒ぎとなった。


一通り飲み食いしていると、イレインが親友に寄り添うようにドカッと隣に腰を下ろした。


「あんた女王らしくねぇな。まだ演技の途中なのかよ」


「うるさい、いいから黙ってわたしに酒を注ぎなさい」


「へいへい、翡翠の女王様」


「翡翠ねぇ......わたしのどこが翡翠なんだろうね。君だって煌びやかな女王を想像していたんじゃないのかい? 」


「うげぇ、そんな奴ならこっちから願い下げだっての」


少し間をおいて身なりを正し、翡翠の女王は懇願する。


けいよ。道中、この世の理から外れた異形を見聞きしていないだろうか。あれらはエルフの民、いや、すべての民が倒すべき者たちだ。どうか力を貸してもらえないだろうか」


「ハッ、断ったら?」


「君にはその権利がある。わたしたちに君を強制する力はないし正直無力だ。だから、わたしは君にお願いするのさ」


酔い潰れていた者たちはいまはひとりもおらず、女王とメイド全員が俺に懇願した。

翡翠の女王はマシロの頬を撫でてながら、言葉を紡ぐ。


「この子の舌を治せる者がいる。再生の女王、パナケイア。異形討伐の道すがら案内しよう」


「どうやら断る理由はなさそうだな」



それから半年後、俺は鍛冶屋と異形討伐、エルフ捜索などを兼任し、気が付けばソニア隊副隊長に抜擢される。


剣の才能がなかった俺は、手慣れた鍛冶屋のハンマー神殺しの大槌を手にした。数々の名刀を打ったこの道具なら、数多の敵を叩き潰せるだろう。


「啓、早うせいッ、行くんじゃろ?再生の女王のもとへ」


「翡翠の女王よりおっかないらしいよ、大丈夫?w」


「マシロとおしゃべりしたいから、アミス行くよ」


「副隊長の初任務ね。......緊張してない?」


「ぐちぐちうるせぇーよ。俺もマシロと話してみてぇ、オラッ、お前らとっと行くぞ」


「~~ッ!!」


第一部 完



きっとこの先も辛いことや悲しいことがあるのだろう。

数多の苦難を乗り越えて、彼らなら必ずやり遂げると、

私は信じている。by三峰





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