第7話 『謁見』

 脱衣場で瓶に詰められた牛乳を一気に飲んでいるとがっかりした様子で伽耶が出てくる。もう見慣れてしまったが当然、一糸纏わぬ姿である。


「なんじゃ、お主もそれ好きなのか。ちなみに余はコーヒー牛乳派じゃが」


負け時とコーヒー牛乳を一口に飲み干すと、空いたビンをなぜか胸に差し込んでいる。この間の意趣返しなのだろうか。


次にマシロとアミスが出てきたがお互いのぼせているのか足取りが危うい、

慌ててゲールが二人を支える。


「ちょっ⁉ こんなところで寝ないでよ、もう」


なんだかんだで面倒見のいい奴なんだよな。性格はちょっと苦手だが。


「ソニアよ、主は余と同じくコーヒー牛乳派だったのう。その足りない部分を補強するなら牛乳派に鞍替えするべきじゃないのかのう~?」


胸に挟んだ空き瓶を振りながら挑発をする伽耶を一瞥し、今度は冷めた眼差しで伽耶の胸を見つめている。


「な、なんか言ってくりゃれ? 余が悪かった。もうしないから許してくれい」


そんな戦い方もあるのかと正直関心した一幕であった。


民族衣装のような布衣を纏い、翡翠の女王との謁見となるのだが、

なかなか現れないので居眠りしようとしているとソニアの肘鉄がクリーンヒットし、眠気もどこかに吹き飛んでいく。


程なくして、メイド長イレインがメイドを連れて俺たちの前に現れた。


「そういえばマシロの姿がないわね。アミス、あなたと一緒じゃなかったの」


「んー?アミス知らない、さっきイレインが連れてったけど」


「イレインが? 謁見前なのに一体どちらへ--」


イレインはニタニタと不敵な笑みを浮かべ、俺たちを一瞥するといつの間にか取り囲んだメイド達が一斉に飛び掛かり、後ろ手に縛りあげられる。


「あなたたち正気? これは何事ですか、イレイン!」


「メイド風情が調子にのるでないわ。一揆でも起こすつもりかや」


イレインは片眼鏡を外すと俺に近寄り髪をひっつかんで額をぶつけてきた。


「ぎゃー、ぎゃー喚くなクソガキ共。おい、人間。おめぇの大事にしてるマシロは今頃、野党共の掃きだめにされてるぞ?」


「......てめぇ、いい加減にしろよ。マシロに指一本触れてみろ、本気で殺すッ」


背中に食い込んだ鎧がワニのように喰らいつき、内側から外側へ異様な変容を遂げていく。やがて死狂の甲冑は全身を包みこみ、自我が曖昧になっていく。


ソニア達を抑えていたメイド達は一目散に退散し、イレインは驚愕の表情でその異様な様を直視していた。


薄れゆく意識の中、不意にマシロが抱きついてきたので怒りの感情が徐々に落ち着いてきて、辛うじて我に返ることができた。


「マシロ......無事だったか。良かった」


俺はそのまま気絶し女王の謁見は一時延期の運びとなった。








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