第2話 井苦 咲穂
私が生まれた瞬間、「お前の名前はサホだ!」と言われた。歓喜の言葉より先に名前を押し付ける親がシンプルに自己中だと思うのは私だけだろうか。
「ねえ銀一、サホって名前どう思う?」
銀一、なんていい名前だろう。ちと気怠い感じもするが、そこも含めて最高だと思っている。
「普通。可もなく不可もない。中身も普通の女子なんだろうなーって思う」
だが銀一という人間は平気でこんな事を言うのだ。舌を溶かしてやりたい。バァーカ。舐めてんじゃねえぞ。
「あんたの人権に10億円も価値ないよ」
「うは!ひでえ。身長172センチメートル体脂肪率14パーセント偏差値59の大学を出た上場企業勤めヒラ前科無しビル9階住み26歳社会人の人権だぞ!国家予算並みあってもいい!」
一生やってな。
「もう辞めたじゃん…今月の手取りは?」
「10億!」
「は!?非課税所得!?」
「そうだ」
うおっしゃー。最高じゃん。年末ジャンボじゃん。はい私の勝ち。対戦ありがとうございましたー。
「私も人権売ろうかねえ!人類の夢だわ」
「何言ってんだ!お前が人扱いされるからまだ俺の生活が成り立ってるんだろうが!」
うへぇ。情けない。かわいそ。
つまり銀一ぃ、わーしがアンタの首の皮を繋いでいると言っても過言じゃねえわけだ!
「おおパトラッシュ、疲れたろう!私のために今日の洗濯は全部自分でやってくれ!」
「鬼だあ!」
井苦銀一に人権はない @junk1900
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。井苦銀一に人権はないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます