兄と弟、初めての『子』作り

 意外に思われるかもしれないが、聖書というのは副産物である。人間らしく言うなら、「我が子」と言うべきものだ。聖書我が子が在るから教会がいるのではない。まず、神に集う団体があり、そこが生み出すのだ。

 我が子であるから、持てる技術と知識の全てを注ぎ込み、その聖書翻訳を愛してもらおうとする。その為には何十年という歳月がかかる。

「あ゛〜! もうここで打ち止めだ! 多義的に解釈できる翻訳になった、そこで満足すべきだ!」

「兄さん、聖書が多義的じゃダメだよ。人を惑わせることになる。」

「もう惑わされてるよ、この段階で! 信仰が揺らぐならそれは教え方が悪い。」

 そう言って、カトリックはビシッと、今の今まで議論していた場所を指さした。「義」という言葉が充てられている。

「漢字の可能性は無限大だ。」

「僕が兄さんと喧嘩してた根拠を、漢字一文字で片付けないでくれないかなぁ!?」

「ルターが日本人じゃなかったからだとしか……。でもそんなもんなんだと思うぞ。」

「何がさ。」

「500年近く殺し合った仲の組織にんげんが和解するのに必要だったものは、聖書に書く「一文字」だけで良かったんだ。」

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Alleluia MOEluia BLuia! アルテム・カエレスティス PAULA0125 @paula0125

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