呪いと願い

二年付き合った彼氏と別れて一ヵ月が過ぎようとしている。

 呪いはやっと効力が薄くなってきた。彼を思い浮かべるのは、今では寝る前の目を閉じた瞬間だけ。

 こうして時間とともに記憶もなくなっていく。そして、空いた記憶の隙間を埋めようと新たな恋をするんだ。

 一週間前くらいに彼からLINEが来ていた。

『ごめん。もうしない。まだ佳奈のことが好きなんだ。もう一度付き合ってください』

 口先だけのごめん。謝るなら最初から浮気なんてしなければいいのに。ばか。ほんとに

ばか。

 わたしはまだ既読のまま返せていない。

 もう一ヵ月なのに、名前を呼ばれただけでまた好きになる。信じてみたくなる。

 狭いワンルーム、ひとり寂しい。

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狭いワンルーム 大崎 音 @Torrry

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