後編
彼氏がおかしい。
友達にそれとなく尋ねてみたけどおかしいところは無いって口を揃えて言う。
でも私にはわかる。
彼氏がおかしい。
夏の終わりごろ、そう思った。
一人称が突然「俺」になった。
夏休みが開けてイメージチェンジなんて思ってたけど、私は「僕」って言ってたあなたが可愛らしくて好きだった。
授業をずっと寝て過ごすようになった。真面目な顔して受けていたのに私に分からないところを休み時間の度に聞いてくるあなたが好きだった。
体育の授業にはりきるようになった。球技は率先してリーダーになりたがる。ボールを顔にぶつけて鼻血を出して笑ってるあなたが好きだった。
強引にキスをしてくるようになった。私がいくら待ってても照れて出来ないあなたが好きだった。
音楽の好みが変わっていた。カラオケに行くと激しいロックを歌うようになった。優しい声で切ないバラードを歌うあなたが好きだった。
ファストフードをよく食べるようになった。帰り道にいつもハンバーガーを2個食べる。ポテトだけでお腹いっぱいって笑うあなたが好きだった。
道をゆずらなくなった。大股で歩いて周りを威圧する。私を置いて人助けに走るあなたが好きだった。
SNSの返信が早くなった。すぐに返信をしては返信をせがむ。11時には寝ちゃって、翌朝にごめんっていつも送ってくるあなたが好きだった。
私は何故か彼氏は別人だという確信があった。
そして私は覚悟を決めて彼にメッセージを送った。
いつもの公園で待ってる
____
公園のベンチで1人待っていると彼氏が走ってやってきた。
隣にドカッと座る。
私は意を決して今日家に親がいないことを伝えた。彼は興奮していた。
すぐに立ち上がると私の手を引く。
私の部屋に入るや否やベッドに押し倒された。気持ち悪かったが我慢してスカートのポケットの中のはさみを握りしめた。
強引にキスをされる。唇を固く結んで拒むが、無理やりに舌を入れられる。吐きそうだった。
上着を脱がされて胸に顔を埋められる。吐息が生温くて気持ち悪かった。
そして、彼氏の手がブラジャーにかかる。
私は目をつぶって、はさみを思い切り彼の首に突き立てた。
目を開けるとぬるりと温かい感触が顔に広がる。彼の口から血が漏れている。
私は何度もはさみを突き立てた。涙が止まらなかった。
彼は力なく私に覆いかぶさった。
息切れと動悸が治まらなかった。
血に染まる私の両手は凍えるほど冷たかった。
私は気絶するように意識を失った。
____
目を覚ますと汗をぐっしょりかいていた。
そして、彼の死体が消えている。血のシミ1つ残っていなかった。
スマートフォンが鳴る。彼氏からのメッセージだった。
私は怖くなって階段を駆け下りて家を飛び出した。
そのあと、私は・・・・・・。
彼女が死んだ。 たたらば @yuganda_kotuban
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます