蛾になってやろうと思いました
牛戸見しよ蔵
蛾になってやろうと思いました
そうだ、蛾になってやろう。
夜路暗がりの中、私はふとそう思いました。
連続した街頭の灯をただただ追い、あの重い内骨格と長いを持った、のろまな蛾に。
──灯は近づく度に、ススキの穂へと広がってゆく。
あの感覚を、蛾はおぼつかない足取りでそれを幾度も踏みしめていく。そしてまた追ってゆくのです。
変人なぞ誰が思うか、誰も見てさえおらぬのに!
しかし蛾は、自宅の前に差し掛かった時ふいと人間の意識が戻るのです。
少しだけ高い場所から飛び降りたような漠然とした心残りと頂を目指す山中のような高揚感が、脳みそで衝突する。
衝突しながら、私はまた人間に戻って自宅の扉を開けるのでした。
いずれ、あの人では無かった意識らは、理性に食い殺されてしまうのでしょう。
そしていつの間にか、私は人間として日々を過ごしてゆくのです。
蛾になってやろうと思いました 牛戸見しよ蔵 @ox32
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