間話、とある村近くで

 小さな村のはなれ。がさりとした音を立てながらその人は目当ての場所へとたどり着いた。

 目の前にあるのは、洞窟どうくつへの入り口。成人男性の中でも背の高い人一人ひとりが通れるかどうかの高さの入り口を見て、その先を想像する。

 ロダン村。王国と中立国の丁度中間辺りに位置するその村では、魔物まものが定期的に現れる事もあり洞窟どうくつおそれられていた。

 本来ならどちらかの国の兵士、もしくは冒険者ぼうけんしゃ魔物まもの征討せいとうする。しかしその周期を外れ、ある異常がそこでは起きていた。


 「さて、っと」


 洞窟どうくつから現れたいくつかの魔物まもの失踪しっそうした少女。そして唯一ゆいいつ事情を知るのはいまだ幼い少女の幼馴染おさななじみである少年。

 村でも若い走れる男が、二手に分かれ助けを呼びに行ったが、それがたどり着くまでに早くても数日がかかるだろう。

 通りかかったある旅人は、事情を聞き洞窟どうくつへと足をれんとした。


 「うーん……まぁ目的からはちょっと外れるけど。人助けはしなくちゃね」


 夕焼けのような赤みがかったかみをしたその女性は、その背丈せたけからすれば不釣ふついな少し大きいおのを手に洞窟どうくつへと入っていく。

 その様子におそれはない。魔物まものとの戦闘せんとうも想定し、その上でおとずれたのだから。

 その頭には、けもののような耳が生えていた。

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英雄になりたいと、少年は叫んだ【旧版】 野崎ハルカ @Nozaki_Haruka

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