二十五話、旅立ち
「準備できましたか」
「うん。こっちは
「
もう長い事お世話になった宿で、
半ば
これなら
「それじゃあ、行こうか」
「はい」
荷物を持ち、愛着があったのか
そのまま宿の店主に
黒
リノが
「重かったら言ってね」
「……軽すぎるほどなのでこれ以上もなにもありませんけどね」
むしろ
リノの
「……」
荷物を
成り行きとはいえアルスからの
「どうしたの?」
三番街の城門。その近くにまで
早朝の出発。太陽は顔を出すか出さないかという少し白んでいる時間。少女からすれば少し
「いえ、何でもありませんよ。……強くなろうと、そう思っただけです」
「……そっか」
その本心を、アルスは知り得ない。そしてアルスも、無力感を
その先に、一つの
「ミア」
「
「…………そう、いや。どうだろうね?」
そこにいたのは、私服ではなく軽装を身につけた
早朝
立ち止まるアルスに、リノも
「……はぁ、まぁ、いいけどね。けれど、何も言わないのはどうかと思うよ?」
「それは、ごめん。ちょっと
「アルスのことだから、もうちょっと実力を身につけて……いや、
それこそアルスの内心を言い当てていて、そんなにわかりやすいかと苦笑いが
多分本来ならそうなっていただろうとも。けどこれも自分の
「行き先は?」
「とりあえずは、アルミニアに行ってみる。そこからは分からないけど」
それ以上は答えない。どうなるか分からないのは事実で、何に
例えアルミニアから
「そう。中立国なら、リノちゃんも変な目では見られないだろうし、
ミアの視線が、アルスの
アルスの知る限りだが、
深く
「多分ホーレンさんたちにも言ってないんでしょ」
「…………うん。まぁ、あれだよ。あの人たちは何かとお祝い事とかしようとするかもしれないし、
「それもそうだね。きっと大いに
ミアには事情を知る権利がある。知らぬ間に
顔を見るため。それだけのために
「ありがとう」
「良いよ。同期の
すれ
このままあとは城門を出るだけだ。道のりは数日を要する。最初のうちは不慣れな点もあるだろう。行けるところまで行くべきだ。
「っ」
そう知りつつ、それでも言う事があると口を開く。ともすれば生意気と取られるそれを、それでも。今言わずして、いつ言うのかと勇気を出して。
「ミア!」
姿勢良く歩き去ろうとする少女が、
(
それでも――。
「――
それは、本当に最初の
「――そっか。なら、ここから先は。いや、今までもだったね」
「ああ、競争だ」
それを見て、アルスも
「まずは銀級にならないとね。競争相手が下にいちゃ張り合いがないじゃん」
「すぐに追いつくよ。必ず追いついて、そして
まだ始まってすらいない。片付けることはある。でもその後で、先を行った背中を追いかけよう。
自分のやり方で。約束を守るために。
「仲間に
「
小さく
「それは困るな……。うん、本当に感謝してるんだ」
「ならせめて早く追いついて
「追いつけるように
次にいつ会えるのか。それすらも分からない。確約するような約束も、しない。
「……それじゃあ、また」
「うん。また、どこかで!」
そう言って、|
「ごめん好き勝手話しすぎちゃって。行こうか、リノ」
「そうですね」
盛り上がるような
白けた三番街が
「
通る声で背中を
アルスは大きく手を
合わせるつもりはなく、けれど同時に。
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