VTuber VS ワリカンキング
ぎざくら
じゃあ、3人で9002円ならどうするつもりだぁ!?
どうもー……
あ、こんばんは、どうも。
ドドンゴ・ドドメン子でーす。
今日も配信来てくれてありがとねー。
あ、どもどもー。
音量、オッケーですかー?
はいはい。オッケー、ちょうどいい、ちょっと小さい?じゃあ、ちょっとだけ上げよっか。……はい、オッケー。
土曜日恒例、深夜トーク、始めまーす。
……あ、元気無いって?
分かる?
そうなのよー。
今日ね、ちょっと大変だったのよ。
だから別にね、機嫌が悪いとかじゃないからね。
ごめんね、ちょっと元気無くて。
そうだ。せっかくだから、その話するね。
いや、ホントにヤバかったんだって。だから聞いて。マジで聞いて!
これ、始まりは今日じゃなくて、実は先月の話から始まるんだけど……
先月末に拙僧、男友達と2人でカフェに行ったのね。
あ、変な関係じゃないよ。その男友達は次のコラボ先のスタッフさんでもあったから、打ち合わせがメインって感じ。
で、その時に頼んだのが、ドリンクバー2つと、大皿のポテトだったの。拙僧、前にも言ったけどポテト狂で1日1kg以上摂取しないと禁断症状出るから、それにしてもらったわけ。その男友達も、ポテト少し食べたいって言ったから、しぶしぶ食べさせてあげたわけ、その大皿から。
で、支払いになったの。
ポテトはほぼ全部拙僧が頂いたんだけど、男友達は「いいよ、割り勘にしよう、後腐れ無いように」って言ってくれたの。まあ割り勘なら損は無いし、奢られたって感じにもならないから、いいかなって思って。拙僧もそれでオッケーって言ったの。
え?男の方が奢れって?いいのいいの。拙僧、そういうの気にしないし、コラボしたらビジネス相手にもなるから、奢りとかで貸し作られるの、逆に困るのよ。そう。だからそこは全然問題なし。
で、話戻すね。その時、お勘定が2,001円だったの。
あ、1円以外の小銭要らないから、楽で良かったぁって思ったの。
みんなも思うよね?1円なんて拙僧が払ってもいいし、相手が払うよって言ったら、じゃあおねがーい、って言っちゃっていい額じゃん。
あいつ、なんて言ったと思う?
「まずいな……2で割り切れない」
めっちゃ真剣な顔で言うわけ。
えっ?何この人……って思って。まさか1円払いたくないの?それで悩んでる?って思ったから、拙僧言ったの。「いいよ、拙僧1円払うよ」って。そしたら、ついに何か、ちょっとキレ出しちゃってさあ。「ダメだ!それじゃ俺が奢ってもらったことになっちまう!」って。
1円だよ!?あんた以外、誰が気にするのよ!?
で、なんか1分くらい腕組んでウンウン唸りだして。困ったなあって思ってたんだけど、いきなりパッて顔上げたの。なんか、すごい良いこと思いついた!って感じの顔で。
そいつね、最初にこう聞いてきたの。
「1円玉持ってる?」
拙僧、お会計のためにちょうどお財布出してたから、ちょうどいいと思って小銭入れガサ入れしたの。そしたら、1個だけあったの、1円玉。だから、「あるよ」って言ったの。あ、結局、拙僧に払ってもらうことにしたのかなーって思ったの。思ったのよ。
その後、なんて言ったと思う?
「その1円玉、半分に切って。俺も半分の1円作るから、半分の1円玉2つを溶接して1つにしよう。それで、割り勘になる」
……もう、意味分かんなくない?1円玉半分に切るってどういうこと!?って思って。
え?小銭入れガサ入れって何wwwって?言わない?こう、ゴソゴソするの、ガサ入れって。言わない!?ちょっと、食いつくのそこじゃないから!いひひひ……そこじゃないし。うひひ……
そう、もちろん言ったよ?「半分になんて切れないよ」って。そしたら、「しょうがないなあ、じゃあ俺が切るよ」って。しょうがないじゃねーよ!お前がしょうもねーこと言ってんだよ!って思ってたら、拙僧の手から1円玉奪い取って、なんか鞄抱えてトイレに駆け込んでいくわけ。何?何?って思ったんだけどさ。こっからマジ、ホラーだよ。
なんかトイレの方からさ、チュイーーーンって音すんの。しかも、ドアの隙間からちょっと火花飛んでてさ。そう。マジで切ってんの!?って思って。
道具持ってんの!?wwwって、そう、拙僧も思った。もう切るの、想定済みじゃんって。で、音がやんでしばらくしたら、トイレのドア開いて。めっちゃ満足げな顔でこっち来るの。もう怖くてさ。だって、割り勘のために1円玉切ってんだよ?で、拙僧に渡してくんの。
真っ二つになった1円玉をさ。何に使えばいいのよ、これ。
で、拙僧から残り1,000円受け取ったら、あとはすっごい嬉しそうというか、いいことしたぁ!って感じの顔で、レジに歩いてったわ。拙僧はね、その時思ったのはもう、この割り勘の件であいつと話すのはやめようと思って。文句言っても話通じないもん。コラボの方は前から気になってた子だから、こいつと揉めて話が無くなったらやだし。
それより気になったのは、溶接した1円玉って硬貨の偽造じゃない?っていう。だから拙僧、そっから別れて帰る途中、ずっと考えてたもん。偽造硬貨で訴えられたとき、「拙僧は関係ありません」ってどうやって証明しようか。ああ、半分に指紋残ってるからヤバいかなーとか、もうそんな変なことしか考えれなかった。で、家に着いて一息ついたときに思ったの。もう、忘れようって。考えても仕方ないって。それでもう忘れて、コラボの話とかも普通に進めてたわけ。
あ、コラボ相手はね、まだ言えないのー。ごめんねー、そっちの話は、またできるようになったらするからね。大丈夫だよ、コラボの方はちゃんと、やるから。そっちは大丈夫。
でもね、もう察しの方も多いと思うんだけど。
そう。今日、起こったの。あの悪夢が。割り勘の悪夢。再び。
今日はね、コラボ相手とスタッフさんと、打ち合わせの後に7人で懇親会があったの。
拙僧のマネージャー……マネ僧もいたんだけど、他の5人はみんな相手側でね。
そう、いたのよ。例の男。
でも、さすがに今日は大丈夫だと思ったの。だって、向こう5人もいるからさ、さすがに1円切るとか言い出したら、みんなで止めるはずじゃん。
で、その日ね。
お会計が35,002円になったのよ。
もう分かるよね。
「うーん、2円かあ」
つって、また唸りだしたのよ、例の男が。
「おいおい……」
「うちが払えばいいだろ、2円くらいさ……」
って、向こうのスタッフさん達、ちょっとざわつきだして。
コラボ相手の子も、割り勘野郎のことは知ってたみたい。マネ僧だけ知らなくて、何?何?って感じになってた。
で、ついに言い出したのよ。なんて言ったと思う?
なんか、本当に意味分かんなくて、ハッキリ覚えてないんだけど、えっとね、こんな感じのこと言ってた。
「みんな、1円玉を7分の720度に切ってくれ。そんで、さらに半分に切ってくれ。それで1円玉2枚、作成するから」
みたいな。
もう、何をどう切るのかも意味不明だし。さらに半分って何?
「半分にされた1円玉出しとけば?」って?いひひ、それは絶対やだ。同類だと思われる。それにさ、もう埋めたもん、その半分。財布とか引き出しにあって見つけるとなんか嫌だから、二度と目に入らないように外に埋めた。いひひはは、やり過ぎ?いや、埋めたよ、拙僧は。
で、向こうのスタッフさん達、やっぱり「またかあ」って感じになってるのね。「どうしよう」みたいな。その割り勘野郎は「早く早く」って目輝かせてて、ホントにキモかった。そしたら、うちのマネ僧が言ったの。
「あの……」
「1円玉、持ってないんですけどぉ」
そしたら割り勘野郎、目の色変わっちまってさ。
「なんでだよおお!」とか叫びだしたんだよね。
おいおいおい!って感じで、周りのスタッフさんがなだめようとしたんだけど、振り払ってバンって机叩いて。
「1円が無きゃ、割り勘できないことくらい分からないのぉ!?」
ってなんか、オネエみたいな口調でキレだしたの。マジで意味不明。
「だって、たいてい1円単位で割らないと割り勘にならないでしょ!?」
って、めっちゃまくし立ててたんだけど、ここ、うちのマネ僧の凄いとこね。全然ビビって無くて、ぽかーんってした顔してさ、言うの。
「なんで1円単位で割らないといけないんですかぁ?私が10円余分に出しましょうかぁ?」って。
もちろん、割り勘野郎マジギレ。
「10円も余分!?ことわざ知らないの!?『1円を笑う者は1円に泣く』ぅ!」
もうさ、こっちは1円じゃなくてあんたに泣いてんだよ、って話なんだけど、マネ僧それでも全然引かなくて。
「あー……なんか分かんないんですけどぉ、割り勘が難しいなら、私、払いましょうかぁ?」
もう拙僧、マネ僧のこと尊敬したよ、このとき。で、ちょっと拙僧も気分でかくなっちゃってさ、言っちゃったの。「こっちがコラボお願いしてる側だし、ここは拙僧とマネ僧に奢らせてくださーい」って。
今はね、後悔してる。
「奢るぅ!?奢れる者久しからずうぅ!」
って。もうギャグなのかホラーなのかよく分かんないでしょ。でも、あの時の拙僧は怖かったよ。だって、1円玉をチュイーーーンって切れる道具っていうかさ、凶器持ってるじゃん、あいつ。最悪、拙僧の頭がチュイーンされると思ったよ、あのときは。
もう割り勘野郎、頭振ってたもん。怒りで止まってられなくなったのか、ヘッドバンキングしてたもん、しばらく。マネ僧?ずっとその光景見てたよ、ぽかーんって顔して。でも、一応ね、しばらくしたら割り勘男のヘドバン止まって、なんか冷静な顔して、また言い出したのはね。
「2円だけツケにして、後日払いに来よう」とか言うの。
もうマジでダルいよね!?せめて払わせてくれって思ったよ、拙僧も。でもきっと先に誰かが払ったら「割り勘じゃない」ってキレるだろうから、みんな黙っちゃって。
さすがにもう諦めて、拙僧がマネ僧に渡そうと思ったの、拙僧の1円玉。そう。ちょうど2円持ってたからさ。でも、マネ僧が「私、電子決済しか持ってないのに」ってつぶやいたから、もうそれすら絶望になったわ。そう。1円以外の割り勘も払えないの。もう、和平の道は閉ざされたって感じ。もう、戦いを覚悟した。
その瞬間、個室のふすまがガラッ!って開いたの。あ、ごめんね、これ、ずっと個室だったの。だから余計怖かったよ、拙僧。もう、話つけなきゃトイレにも出れないみたいな雰囲気だったから。
そう。で、ガラッ!って開いて、あれ?店員さん?って思ったら……
警官3人くらい来てた。
で、警官の人が、
「そこのあなた。以前、この店で複数の硬貨をつなぎ合わせた、偽造硬貨を使用しましたね?」
って。
警官に連れられてく割り勘男の背中見て、拙僧思った。
もう、こいつとは絶対縁切ろうって。
「それがいい」?だよねぇ!あ、たぶん割り勘野郎、そのうちニュースに出ると思うよ。1円を切り刻んだ男、逮捕、みたいな。去り際もキモかったよぉ。最後の捨て台詞がさ、もうホントに気持ち悪くって。
「割り勘の王は、この程度で滅びはしない。いつか再び、何者かがワリカンの王になろう」って。マジで意味不明。
あー、スッキリした!そう。1ヶ月も黙ってたの、結構ストレスだったわ。でも無事逮捕されたから、喋れてよかったー!
あ、寄付金ありがとー!旅の修行僧さん。「姉と弟と、3人で持ち寄った金額です!修行に使ってください!」ありがとー!金額は、なんと9,002円も!
9,002円?
3人で……?
ちょっと待って、それ、いくらずつ出したの?
金額は平等じゃないと、後で喧嘩になるよ!?
「2円くらい、いいじゃん」!?良くない!あた……拙僧が今日、その2円でどれだけ苦労したか、話したばっかでしょ!?『1円を笑う者、1円に泣く』ぅ!
とにかく、持ち寄るなら平等にして!今は揉めなくても、調子に乗っちゃダメ!奢れる者は久しからずよ!ねえマネ僧!寄付金、2円だけ返せない!?え、無理!?じゃあ全額返して!それも無理ぃ!?ちょっと、どうすんのよ!そうだ、良いこと思いついた!だったら、あと1円寄付金よこしなさい!え?直接要求したらダメ!?ああもう!融通利かせろよマネ僧!頭チュイーーーンするぞーーー!!!
この配信は終了しました。
VTuber VS ワリカンキング ぎざくら @saigonoteki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます