青春アレルギー
ホリカワソラ
Day 1「遅刻寸前?!」
僕は青春というものが嫌いだ。
例えば、体育祭の集合写真で皆が並んでいる前で横に寝っ転がって写真を撮る人 。
例えば、 学校で行われる行事そのものだったり。
とにかく僕はキラキラと眩しく光るあの光景が嫌いだ。大声で話して周りの目を気にしないあの光景が嫌いで、そんな僕はきっと青春アレルギーなんだ。
「おい空〜、おっは〜!今日も学校とかつまんなくね?なんかこうさ、綺麗で優しくて美人なお姉さん居ないの?」
紹介が遅れてしまったけど、僕の名前は空(そら)。
所謂 ”陽キャ” や ”一軍” とは程遠い部類の人間だ。
そして、朝から危なそうなことを言っているのは、卒業した幼稚園・小学校が同じの隼斗(しゅんと)だ。
「おい、しゅんと。綺麗と美人って同じだろ異端者め。あと、そんな都合よく現れてくれる訳ねぇよ」
「そうかな、居たとしても俺らなんかには目すら合わせてくれないか」
「しゅんと、、、朝からそんな悲しい事言うなよ」
桜が散る通学路をふたりはため息をつきながら自転車で花びらを散らし進んでいく。
横断歩道に合わせてゆったりとブレーキをかける。キーっとブレーキの音が住宅街に響いた。
「車全然止まってくれないな、おまわりさんが居たら直ぐ止まるのにさ」
「それって、しゅんとじゃん」
「どういうことだよ」
「先生の前では、ビシッとするけど居ないときはサボり魔に変身するもんね。今度、しゅんとの顧問に言っちゃお」
「おい!待ってくれ!それだけは!」
車が止まり、僕はしゅんとが動揺している間にスタートを切って逃げる。通学用の自転車は重くて中々進まない。自転車でカーチェイスを繰り広げながら学校の百メートル手前にまで来た。
「この勝負は俺が貰った!」
しゅんとは力を振り絞り立ちこぎで遠ざかって行く。
いつの間にか、しゅんとの目標は顧問へのちくりの阻止から自転車の速度勝負へと変わっていたらしい。
しかし、 僕は自転車から降りゆっくりとしゅんとの元へ行く。
なぜ、降りるかって?校門には、『鬼の水村センセ』が居るからだ。
野球部のしゅんとの顧問で、その恐ろしさからしゅんとは僕のちくりを阻止しようとしたのだ。
校門に近づくと、スピードを出しすぎたしゅんとが『鬼の水村センセ』に捕まっていた。僕はあふれる笑みが抑えきれず満面の笑みでしゅんとの横を通り、
「おはようございます!水村先生!」
我ながら完璧な挨拶に自然となってしまった。
「おー!いい挨拶だな!おはようさん!」
まだまだ水村先生の陽気な挨拶には届きやしない。
自転車を駐車場に置き、教室に向かう。
新校舎を建てるために仮校舎に移されたのだが、靴箱の話し声、靴を入れる音、先生の挨拶、それに応える生徒の挨拶がやがやとした雰囲気を生み出す。
この音を聞くと、一日が始まったのだと現実を突きつけられる気がする。
開放されたしゅんとが横に来た。
「まさか捕まるとは思わなかったわ。反省反省」
「本当に反省してるか〜?」
すると、完全登校時間の5分前のチャイムが僕達の会話を途切れさせた。
「やべ!もうこんな時間じゃん!急がなきゃ!」
「おい、しゅんと!本当に反省してんのか!」
ふたりして静かな廊下を走っていく。二階に上がりクラスの違うしゅんとと別れる。
教室のドアを急いで開けると視線が自分に集まる。嫌な汗をかいた。
席に行き、教科書を出して今日の準備を済ませる。
遅刻寸前のところで、吉野君という学年の人気の男の子が走って飛び込んできた。
「おいおい、遅刻だろほぼ!」
「吉野君寝坊したのー?」
「ギリセーフ!危ないよー!」
教室は騒がしくなる。そして、担任の堀川が、
「お前ら静かに。吉野〜、あと十秒で遅刻だぞ。早く座れ〜。」
「危ねえ、終わるとこだったわ」
僕の時とはまるで反応が違う。これが、陽キャなのか。
羨ましく、そして憎たらしいという感情が湧いてきた。
まるで、アレルギーのように。
青春アレルギー ホリカワソラ @sora8654
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