投資詐欺に引っかかり、孫のために大事に貯めていた6000万円を騙し取られた孫井鹿子。家族を心配させてしまうのが嫌でなかなか警察にも行けない。この話を聞いた鹿子の友人たちは意外な提案をする。詐欺師を逆に詐欺にかけて奪われた6000万円を取り返そうというのだ!
詐欺や騙し合いといった頭脳戦を扱うジャンルを「コンゲーム」と呼ぶが、本作はそのコンゲームに老人が挑むかなり異色の作品。亀の甲より年の功とは言うが、詐欺にかけては素人な老人たち。どこかコミカルな騙し方を思いつくもあっさりバレて逆に騙されてしまう始末……。
この逆襲計画に巻き込まれた探偵の祖父江は、いざとなったら警察に行けばいいやと気楽に様子を見守っており、どこかコメディチックに物語は進んでいく。しかし読者よゆめゆめ忘れる勿れ、ミステリー小説の真髄は作者と読者の騙し合い。軽やかな筆致で進む物語に油断していると、思わぬ真相に騙されてしまうこと間違いなしだ!
(「騙し騙され詐欺の世界!」4選/文=柿崎憲)