第10話 休日の夜は必ず何かが起きる(前編)
土曜日の夕方、この日は一希も家にいた。とはいっても午前中は部活で、練習後も職員室で事務作業などを行っていたので帰ってきたのは15時頃だった。それでも菜乃華にとってはありがたい。夕飯の支度をしている間に子供達の相手をしてくれるからだ。
リビングのテレビにはアプリが内蔵されており、YouTubeを見ることができる。宗一はYouTubeでアニメを見ていた。華咲は宗一に構ってほしいらしくちょっかいをだすが、宗一にかわされている。そして諦めて宗一のプラレールが入っている箱を開けて、レールを床に出していた。
だが、宗一はそれもしてほしくないらしく、レールを片付けて蓋をしめてしまう。何をしてもおもしろくない華咲はついに泣き出した。菜乃華は一希が相手をしてくれるだろうと思い、そのまま夕飯の準備を続ける。華咲はなかなか泣き止まない。一希は何をしているのかと菜乃華がリビングを覗くと、ソファに寝っ転がりながらスマホをいじっている。
『華ちゃんの面倒見てあげてよ!』つい強い口調で菜乃華が言葉を発する。
『ん、ちょっと待って』とやる気のない返事をする一希に菜乃華は持っていた包丁をまな板の上に置き、手を洗ってリビングへと行き、華咲を抱っこした。
『何やってんの?』
『仕事のメール返してる。』
この会話のやりとりはよくあることだ。
『いつ終わるの?』
『すぐ終わるから待ってて。』とどうせすぐ終わらないことはわかっている。とりあえず、すぐ終わると言う言葉を信じて一希がメールを返し終わるまで華咲の相手をすることにした。5分経ってもなかなか終わらない。華咲はやっと構ってくれる人がいてご機嫌だ。
『まだ?』
『ちょっと待って。』
一希はスマホをいじり続けた。
一希がスマホを置く。『終わったよ』
菜乃華は華咲を一希に託して台所に行こうとした瞬間、華咲が泣き出した。一希が抱っこしても泣き止まない。明らかに華咲はママの方に行こうとしている。なかなか泣き止まない華咲に宗一もしびれをきらし
『うるさくて聞こえない。ママが抱っこすればいいじゃん』
その言葉を聞き、一希は
『そうだな。今はパパの気分じゃないんだよなぁ。』と言って自分の部屋へ向かった。
結局、菜乃華は華咲の相手をしばらくすることになった。ようやく落ち着いてきたところで、菜乃華は台所に戻る。
夕飯が出来上がった所で呼んでもいないのに一希が『お腹すいた』と言ってリビングへやってきた。机の上にはできたおかずが並んでいる。あとはご飯をよそうだけだ。
怒りがおさまらない菜乃華は一希以外3人のご飯をよそって華咲をベビーチェアに座らせた。『さぁ食べよう。』一希は自分のイスに座ったが、自分のご飯がよそわれていないことに気づく。
『俺のは?』
『どれくらい食べるかわからないから自分でよそって。』
本当はだいたいどれくらい食べるかわかっていたが、少しでも一希に仕事をさせたかった。菜乃華が話している途中で立ち上がり、炊飯器に向かう。
『宗一、もうYouTubeやめて。』一希が注意をする。
『あとちょっとで終わるからそれだけ見させて。』と言って残り時間を一希に見せる。残り時間1分15秒。まぁいいかと思い、承諾した。時間になると宗一はYouTubeを終了したが、18時から始まるテレビアニメを見るためチャンネルをセットした。宗一は毎週土曜日はそのアニメを見ていた。
だが、一希はそのことを知らない。
『えー、アニメ見るの?宗ちゃん今までテレビ見てたんだから、次はパパに見せてよ。』
『えー、やだ。だって僕いつも見てるもん。』
『パパ普段なかなかテレビ見れないんだよ。』と大人気ないことを言うが結局、一希が折れた。三木谷家にはテレビが一台しかないので、家族4人でそのアニメを見ることになる。
すると一希はスマホを取り出す。机の上にスマホを置き、動画を見出した。思わず菜乃
華が
『何やってんの?』と注意する。
『せっかくの休みなんだしご飯の時くらい見たいの見させてよ。』
『子供達の前でそんな姿見せないでよ。』
一希はスマホを自分の膝に置いた。菜乃華はこそこそ動画を見ていることには気づいていたが、めんどくさいので気づかないふりをして華咲にご飯を食べさせた。
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