第11話 休日の夜は必ず何かが起きる(中編)

 全員の食事が終わり、お皿を流し場に持っていく。一希のコップにはまだお茶がほとんど残っていた。

『お茶まだ飲む?』

『置いといて。』

ソファに横になりながらスマホを見ている一希が答える。菜乃華は一希のコップ以外を片付けて台拭きで机の上を拭いた。

 食器を洗い終え、お風呂の準備をする。子供達の着替えを出し、

『宗ちゃん、たまにはパパとお風呂に入る?』

『やだ。ママと入る。』

宗一の答えはわかっていたが、あえて一希の前で聞いた。結局いつものように3人で入ることになるが、一希がいることで、お風呂で呼んだら華咲の服を脱がして連れてきてくれるので、それだけでも助かる。

 菜乃華と宗一が先にお風呂に入る。2人が洗い終えた所で風呂場にある呼出ボタンを押す。しばらくして一希が裸になった華咲を連れてきてくれた。

 華咲の全身を洗い、3人で湯船につかる。先に湯船に入って遊んでいた宗一が華咲に向かって水鉄砲をやろうとする。それを注意すると、宗一は軽く引金を引き、華咲の肩にお湯が当たった。先に華咲を上らせる。呼出ボタンを押すとバスタオルを持った一希がドアを開けた。真っ赤になった華咲を受け取り、風呂場では再び宗一が水鉄炮にお湯を入れ、様々な場所にお湯を放っていた。

 菜乃華もお風呂を上がり、濡れた身体を丁寧に拭いていく。保湿クリームを塗り、寝巻きを着て顔に化粧水や乳液を塗る。いつもならこんなにゆっくり自分のケアをすることができないので今日は念入りに行った。濡れた髪にバスタオルを巻いたまま一度リビングに向かう。そこではまだ一希が華咲に下着を着せている所だった。菜乃華は自分のスマホを持って再び脱衣所に向かった。普段なかなかできないことをしたかったので、スマホを見ながら髪を乾かすことにした。これもワンオペではなかなかできないことなので、特別な時間な気がした。

 髪を乾かし終えると宗一がお風呂から出る。完全に茹で上がったかのような真っ赤な頬の宗一も普段は自分で全身を服が今日は少し甘えて菜乃華に拭いてもらった。2人でリビングに向かうと一希がやっと華咲の服を着せ終えた所のようだった。

『今まで何してたの?』

『服着せてたんだよ。』

『え、遅くない?』

『だって華咲じっとしててくれないんだもん。』

華咲がじっとしてないのはわかるが、それにしても時間がかかっている。それにどこかおかしい。華咲の服は左の肩にボタンがついてあり、脱ぎ着しやすいようになっているが、そのボタンが右肩にきている。つまり前後ろが逆だ。菜乃華が華咲の服を直そうと両腕部分を脱がす。そのまま服だけを首部分でクルっと回そうとしたが、下着もおかしい。

 赤ちゃんの下着は縫い目が肌に当たらないように作られているものが多く、これもそういった商品だ。なので、縫い目が外側にきていなくてはならない。だが、その縫い目が内側にきている。そのため花柄の模様がやけに薄い。

『ねぇ、これ逆だよ。』

『俺も最初は逆で着せたんだよ。だけど、縫い目が外にきちゃったから変だと思って脱がせたんだよ。変な下着。』

これを初産の親が言うならよくわかる。自分も初めは縫い目が逆になっているような感じでいいのか疑問に思った。だが、一希は二児の父親。ましては第二子も1歳をすぎている。ここまで育児ができないのかと呆れるしかない菜乃華だった。

 一希はそのまま風呂場へ向かい、着ていた服を脱ぎ、浴室へと入って行った。結局、上半身は全て着替えさせることになった菜乃華はため息をついた。夫に育児を頼むと返って自分の仕事が増えることに気づいたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る