第4話 死ねばいいのに

 菜乃華にとって"夫 うざい"の検索はちょっとした日課にもなっていた。華咲がお昼寝をしている時に、少し遅めの昼食をとりながらスマホで検索をする。というのも今日の菜乃華は特にイライラしていた。

 今朝、一希がパーソナルジムに行くことにしたことを菜乃華に伝えた。もちろん菜乃華はなんの相談も受けていない。だが、もう契約もして、お金も支払ってきたそうだ。

『パーソナルジムっていくらするの?』何気ない菜乃華の質問に

『2ヶ月で15万。だいたい週に2、3回通うことになる。』と軽く答える一。

『え、15万⁉︎』菜乃華はパーソナルジムの相場はわからなくとも15万円という金額に驚く!

『結構、安いところ見つけたんだよ。』自慢げに話す一希。

『え、そんなにするの?駅前のジムだと24時間やってて月8000円とかって広告出てたよ?』

『あぁいうジムとパーソナルジムは違うんだよ』と歯磨きをしながら話す一希に菜乃華は開いた口がふさがらない。正直、駅前のジムとパーソナルジムの違いはよくわからないにしても月に換算して75,000円という額は決して安い買い物ではない。

『どこにそんなお金あるのよ!』と不機嫌な口調で聞く。

『いいじゃん、ボーナス入ったんだから。たまには贅沢させてよ』

『もう勝手にして』

 何の相談もなしに契約してしまった事実をとりあえず受け止め、菜乃華は宗一が保育園に持っていく水筒にお茶を入れた。

なかなか理解してくれない菜乃華に対して

『そんなにダメだったなら契約解除するけど?クーリングオフで今なら平気だから。』

そう言う一希に対して菜乃華は

『勝手にしてとだけ返す。』

一希は身支度を終え、玄関に向かう、靴を履き、

『じゃあ、いってきます。あ、それで今日遅い。』

菜乃華はいってらっしゃいとの声はかけず

『何時?』とだけ返す。

『11時過ぎるかなぁ』

『遅っ!なんで?』予想以上の時間に思わず菜乃華が聞き返す。

『ジムが9時からなんだよ。初回だから今日はカウンセリングとトレーニングだから少し時間かかるって言ってた。』

さっそく今日からトレーニングの予定を入れていたらしい。それも菜乃華にとって今知った事実だった。菜乃華は何も返さず一希は家を出て行った。

 15万円あったら、家族で旅行に行けるよなぁ。ディズニーランドにも行けるよなぁ。なんてことを考えながら菜乃華は宗一と華咲の身支度を進めた。

 

 保育園の送迎も終わりリビングでは華咲がアンパンマンのぬいぐるみで遊んでいた。

 うちの夫、もう本当に無理なんだけど…。でも、離婚っていうのはちょっとなぁ。夫がいなくなればいいのに。なんて考えていた。

 そんなとき、

あ、うちの夫、死んじゃえばいいのに。

菜乃華はそんなことを考えていた。


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