第5話 離婚はちょっと…
日本では結婚した夫婦のうち、3組に1組が離婚している。うちも他人事ではない。間違いなく菜乃華には夫に対して愛よりも憎しみの方が大きい。
だが、離婚ということに関しては気が引ける。というのも離婚した後のことを考えただけで、ぞっとするからだ。
まず、親権はどうするのか。家のローンはどうするのか。養育費はどうなるか。離婚届を出した後にやらなくてはならないこと、考えなくてはならないことはたくさんある。ただでさえ、結婚した時、苗字が変更したことにより、免許証や保険証などの名前変更などの手続きがめんどくさかった。だが、その頃は好きな人と同じ苗字になるのだからというモチベーションでがんばれた。だが、離婚となれば話は別だ。さらに2人の子供の親権は欲しい。でもこの子達の苗字はどうしよう?宗一は苗字はがかわったらみんなからいじめられないかなぁ?など考えることも多い。
ましてや世間のイメージも変わる。既婚者からバツイチになる。いくら離婚する夫婦が多いとはいえ、菜乃華にはなんとなく気が引ける。家のローンにしてもまだ何千万と残っている。三木谷家ではペアローンを組んでおり、夫婦がそれぞれ半分ずつローンの支払いをしている。離婚ともなれば今住んでいる家は売って、実家に帰るしかない。そうなった時の手続きも菜乃華はどうしていいのかわからない。考えただけで、頭が痛くなる。
ならうちの夫がいなくなる。つまり死んでしまえばいいと考えた。
死んでしまえば、夫の分のローンは支払わなくてよい。さらに生命保険が入るから、自分のローンもそれで支払える。お金の面はある程度これで解決ができると考えた。未亡人となり、世間からの見られ方も離婚とは違ってくる。
夫が死んだ後のことを考えると菜乃華にはメリットばかりが思いつく。少し幸せな気持ちになれた瞬間だった。
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