エピローグ「オリジン」

 オリジン。

 まだ幼かった自分を苦しめ、縛り付けていた概念。



 結局の所。

 その答えを、進晴すばるはまだ、見付けられていない。

 これから先、望む答えに辿り着けるかどうかさえ、はなはだ怪しい。



 それでもいと、進晴すばるは思った。

 自分のオリジンは今、目の前に、二つもるのだから。



「パパー」

「おいで。

 晴凪はな



 ピクニックで訪れた花畑。

 麦わら帽子を抑えつつ、愛娘の晴凪はなは、進晴すばるに抱き着き。

 彼のひざを、占領した。



 横に座る凪鶴なつるは、あの頃と同じく。

 無表情のまま、少し不満そうに、頬を膨らませる。



「ほら。

 凪鶴なつるも」

「……遅い。

 ハルの、ボケ」

「うん、いつにも増して尖ってるね」



 憎まれ口を叩きつつ、進晴すばるの肩に頭を置き、目を閉じる凪鶴なつる

 いつものように、進晴すばる凪鶴なつるの頭を撫でる。



凪鶴なつる

 今、幸せ?」

「70点」

「これ以上、なにを、どうしろと?」

「満足したら、そこで終わり。

 凪鶴なつるは、欲張り。

 もっと、幸せになりたい。

 だから、70点」

しがりだなぁ」

「早く頂戴ちょうだい、サンタさん」

「夏だよ?

 今」



 ニアミスったスキットをしながら。

 エコと、エゴの狭間で。

 凪鶴なつるは、笑顔で、上目遣いをする。



「ハル。

 晴凪はな

 ……ありがとう。

 凪鶴なつるを、エコにしてくれて」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オリジン ーエコとエゴの狭間でー 七熊レン @apwdpwamtg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ