第2話 調査

 現在、冒険者管理組合から来た調査員を乗せ、網を仕掛けた場所まで漁船で向かっている。

 

 「こんな時間にすいませんね」


 彼女は安田さん。20代前半で145㎝位の身長。茶髪で笑顔が可愛い。なぜかついてきた弘人がそわそわしている。ちなみに弘人の身長は183㎝である。無理だ。諦めるのだ弘人よ。彼氏持ちだったらどうするのだ。そもそも一目惚れか?まあ、頑張れよ。


 「いえいえ、まさか海から魔石が取れるなんて思えませんからね」


 そうなのだ。調査の結果、水揚げされた石すべてが魔石だったのだ。魔石はエネルギー資源として大変優れており、様々な企業が大量に使用するため、現在、10㎝程の大きさの魔石が500円で取引されている。

 魔石は大きさによって値段が大きく変わる。


魔石 5㎝以下 100円

   10㎝以下 500円

   15㎝以下 2000円

   20㎝以下 10000円

   25㎝以上 オークション


 今回の水揚げで合計300もの魔石が手に入った。何よりも驚きなのが、水揚げされた魔石のうちすべてが10㎝以上だったことだ。全部で15万円。ニヤニヤしちゃうぜ!。


 水揚げした場所に到着すると、安田さんがバッグから何やらメーターが書かれた装置を取り出した。


 「安田さん、それは何ですか?」

 「ああ、これですか?これは魔力計ですね。周囲に魔力があると、その濃度や量を調べることが出来るんです!」


 そう説明すると、魔力計を起動し先端に付いているケーブルを海に沈めた。


 「すごい!本当にダンジョンが存在してる‼大発見ですよ!」


 こちらを向きながら笑顔で報告してくる安田さん。笑顔がまぶしいです。おい弘人!必死にニヤニヤを隠してるところ悪いが、見つけたのは俺だぞ、俺。


「でも、海底にダンジョンがあるなら、階層を進むことは難しくないですか?」


 もしも海底にダンジョンがあるなら、そこまで潜る必要がある。しかも何階層あるのか分からないから、攻略が難しいだろう。


 「これは私の見解なんですけど、もしかすると階層というものが無いかもしれませんね」

 「えっと、どういうことですか?」

 「そもそも海のダンジョンが、どこからどこまでなのかはっきりとした境界が分かりませんし、他の漁師さん話ではここから数キロ離れた場所でも、魔石が取れているんですよね。ダンジョンはそもそも近くに複数出来ることはあり得ないので、階層の代わりにダンジョンの広さや深さが伸びているんだと思います。」


 なるほどなぁ、まあ安田さんがそう言うならならそうなんだろうな。おい、後ろで顔赤くしてるんじゃねえよ弘人、お前は漁業協同組合に報告しなきゃいけないんだから、ちゃんと話を聞けよ。まあ良い尻だとは思うけど。


 「他に調べることは?」

 「うーん、とりあえず大丈夫です!」


  うーん良い笑顔。思ったより早く終わったな。

  そろそろ日も落ちてきたため急いで戻る。


  船を止めた後、安田さんをタクシーのいる所まで案内する。


 「今日はありがとうございました!」

 「いえいえ、これが仕事なので!」

 「まっまた機会がありましたらよろっ よろしくお願いします!」


 おいおい、弘人お前ガチガチ過ぎるだろw


 安田さんをお見送りした後、弘人がボーっとしていた。


 「綺麗だったなぁ」

 「お前顔に出過ぎだろ。流石に笑い堪えるのがきつかったぜw」

 「はっはあ⁉べ、別に顔に出てねえし‼お前こそ尻ばっか見てただろ‼」

 「おう!良い尻だったな!」


 少しにやけながらそう言うと。呆れた顔をしていた。


 「はあ、自信満々にそう言えるお前が羨ましいよ」

 「これこそが俺のアイデンティティだからな!ん?アイデンティティであってるよな?」

 「はいはい、あってるあってる」


 そんなことを言いながら漁業協同組合に戻った。中学生みたいだなと思ったのはここだけの秘密だ。



 漁業協同組合で粗方の処理をした後、トラックで家に向かう。俺の家は父から継いだ一軒家でそれなりの大きさである。一応裏の山も所有地となっているらしいが特に価値は無い。せいぜい小さな畑があるくらいだ。毎年、植えているのはジャガイモとトウモロコシだ。カボチャの蔓もあるので時々生えてくる。

 家に到着すると、まずは風呂に向かう、これは俺のルーティンだ。という冗談は置いといて、体が汚れているから先に風呂に入るだけだ。

 風呂から出ると、炊いておいたご飯と昨夜の残りのメバル汁、買ってきておいた豚バラ肉を焼いて、夕食にする。うめじゃうめじゃ。


 特にやることもないし寝ようかと考え、ベッドに入ったところ何かを忘れているような気がした。


 「んー?なんか忘れてる気がするんだよなー」


 そのままウトウトと睡眠に入ろうとしたところ、ふと、思い出した為、勢いよく起き上がった。いや、思い出してしまったのか。


「これから漁はどうすればいいんだ?魔石は冒険者しか取り扱い出来ないし。」


 ぶつぶつ呟きながらも夜は更けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おら、ダンジョンで稼ぐだあ~漁師からの成り上がり・・・かも 未来アルカ @syeaksupia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ