一発きりの弾で、人を3人仕留めます

@takakisa

第1話

 とある王国の町はずれに、腕の立つ鍛冶屋が店を構えている。

 その王国は武器生産が盛んで、他国を寄せ付けない巨大な軍事力を持っていた。そうなると、他国との戦争以上に、内部の反乱への対策を強化しなければならない。国王が非常に用心深い性格であったことも働き、対応は迅速に行われた。個人での武器生産を規制する法が完成し、職人が一人、また一人と看板を下ろしていった。腕に覚えのある武器職人はほとんどが国お抱えの機関に勤めるようになる一方、自由な創作を求めて未だひっそりと自営業を続ける武器職人も、わずかではあるが残っていた。鍛冶屋もそのうちの一人であった。男は名をカザマルと言った。


「どうしたものか…」

カザマルは、作業場で一人唸り声を上げていた。一ヶ月後までに、過去最高の武器を用意しなければならなくなった。

数日前、

『法を遵守せず、個人での武器生産を続ける者の処罰を徹底する。カザマル、リン、ホムラ、サン、以上の者を連行せよ』

とのお触れが国王直々に出され、四名の武器職人が城へ連行された。そこで国王は言った。

「貴様らは数度にわたる触書にも応じず、違法な商売を続けた者どもである。本来であれば全員今すぐ極刑に処すところであるが、最後のチャンスを与えてやろう。一ヶ月後に開催される軍部の式典で、貴様らの作った武器を披露してもらう。一人だけ、最も優れた武器を創った者は、この先の武器生産の一切を不問とする。敗れた者は、二度と陽の目を見ることはできないと思え」

 カザマルは考えた。優れた武器とは何か。何をもってその価値を判断されるのか。しかし、いくら頭を捻っても、核心に迫る答えを見つけ出すことができないでいた。いっそのこと、自分以外の参加者を全員殺してしまおうかとも考えた。だが、参加者が一人になってしまった時、一人は見逃してやるという約束が守られる保障はない。アイデアの糸口も見つけられぬまま、式典までの時間だけが迫っていった。

 

 式典当日。各々が用意した過去最高傑作を披露する中、カザマルが取り出したのは、大きな筒と、火薬の入った球であった。

「これは空中に美しい絵画を映し出す銃でございます。大きな音と光を発するため、信号としても重宝しましょう。こんなに優秀な武器は、私が今まで作ってきたもののうちでは一つもございません」

カザマルは自信満々に述べた。

国王は失笑し、

「そうだな。こんなに私を驚かせた武器は生まれて初めてだよ」

と言い、カザマルを解放した。

 カザマルは、どれだけ殺傷能力の高い武器を作り出しても、国王は自分を見逃さないのではないかと考えついていた。用心深い国王のことである。優れた武器を創った職人を野放しにするはずがない。自分が助かるためには、武器職人として取るに足らない存在であることをアピールし、国王を呆れさせる必要があると考えたのだ。真に優れた武器を創ったリン、ホムラ、サンの三人は、牢獄でひたすらアイデアを絞られる生涯を送ったという。


 一人の武器職人の機転から生まれたのが、今にも残る『花火』だったというわけである。

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