チリトリ

イタチ

第1話

憂鬱な箱」


都会のど真ん中、人頃通りの中間に位置する、その平屋建の小さな家の前で、小さな女性が、箒を、手にして、一生懸命都会の喧騒の中、手を動かしていた、一見、その歪な、建物は、新手の喫茶店のようにも、見えるかも知れないが、木製の扉の一メートル程上に、かすれた文字で、掲げられている木の板には「探偵屋」と、記されてるが、その文字を、どれほどの人間が、気が付き、さらには、この店に、依頼するか、僕には、到底知れなかった


「いやー、良い天気でしょうね」

どんよりと、薄曇りの空を目にして、彼女は、そう口にした

初めて、目にした、その姿から、どうも、ただ者とは、思えなかったが、こういう発言を聞くと、いよいよ彼女が、頭の抜けている女に、見えてきた、今夜当たり、どうだろう、そんなことを、考えて見るも、その小ささは、やはり、範囲外である、渡船乗り場には、僕の彼女と、今日のほかの参加者だろう若い男女が、「a」と黄色くかかれた海に面したコンクリートの上で、立っている、女は、すらりとした長身で、モデルと言っても、通用するほどの整った顔立ち、髪は、ボーイッシュなショーットカットで、上下は、ラフなジーパンと、カジュアルなティーシャツである横には、女性特有の大きな荷物が、直に置かれていた、男の方は、真夏だというのに、この天気を見越してか、長袖に、皮のジャンパーと言う、暑苦しい格好であり、しかも、ビジュアル系バンドにいそうな、腰ほどにもある、長い黒髪さらには、丸いサングラスまで、かけている、その横には、どうよう旅行鞄だろう、大きな、荷物が、直に、置かれている

「そう言えば、何しに、島に渡るんでしたっけ」

箒を、片手に、ちりとりと、名乗る女は、今更ながらに、聞いてくる

「何度説明すればいいんですか」

「すいません、掃除以外対して興味がないので」

よく今まで、生きてこれたものだ、学校は、どうしていたのだろうか、まさか、そのころから、いつも、箒を片手に、持ち歩いていたというわけでもあるまい

「今から言いますから、良く聞いていてくださいね」

「はいはい」

彼女は、箒をなでながら、聞いているのか分からない、軽い声色で、返事をする

「事の発端は、付き合っていた彼女が、持ってきたチケットなんです、何でも、近所の福引きで当てたとかで、まあ、後で、聞いたら、道で拾ったらしんですが」

「それはそれは」

そんな話をしている内に、汽笛が鳴り、湾内を、見ると、小型船が、入港していた、それは、いわゆる、漁船という言葉が、当てはまるような、小さな船であり、現に「対流丸」と船に、記されている以外にも、大漁旗が、掲げられていた

「鯛とか、描かれてる奴ですね」

向かいで、探偵は、そう言って箒に、頬を、預けている、本当に、大丈夫だろうか、予想していたというか、それは、悪い予感通り、「a」と、描かれた、コンクリートの近くに、止まり、運転室から、ねじりはちまきをした漁師ではなく、執事と、形容詞する以外に、あまり思い浮かばないような、白髪のスーツを、着込んだ老人が、現れ、渡り橋を、こちらに、かける

「わー、これに乗るの」

隣で、彼女が、そう言って、跳ねる、彼女は、薄着であり、短いジーパンと派手なTシャツ、胸が盛り上がり、苦しそうではある、髪は、金髪であり、どことなくふんわりとしている、耳には、ピアスが、どこぞの現民族の飾りと思うような、大きなものが、今も、飛び跳ねるままに、引きちぎれないか心配なほど、踊っている、そんな彼女でさえ、旅行の荷物は、大きめなトランスケース程もある、こうなると、鞄ひとつ分しかない自分が逆に、少なすぎるような気がしてくる、この旅行は、二泊三日であり、どうやら、物好きな、ツアーらしく、孤島を舞台に、謎解きゲームを、する事が、チケットには記されていた、興味はなかったが、当たったものだからと、行くことにしていた矢先、急に、拾ったとか言い出したものだから、中止かと、思ったにもかかわらず、書かれていたチケットの電話にかけてみたところ、運がいいことに、購入者は、その日、用事が出来て、使えなくなり、代わりに、使用しても、良いことになったのだ

「良いことをした」と、彼女は言ってはいるが、それは違うだろう

柔らかな物腰の執事は、甲板から下りると

「皆様方、お待たせいたしました、とうツアーを、お世話させていただく執事のきまりと、もおします、何か、ご用の際には、何でもおもおしつけください、今から、向かいますのは、井守島と言う孤島でありまして、そこに、建てられた洋館に、みなさまをご案内いたします、船は、およそ、一時間の船旅を予想しております、何か質問はございましょうか」

四人しか居ない客は、だれも、異論はなく、次々に、乗り込む、どうも、人が少ないと思ったが、どうやら、こう言うことだったらしい、きっと、かなり、小さな旅行会社の企画に違いない、元は取れるのだろうか

船は、あまり、快適とは言い難いが、唯一の救いは、天気が崩れないことと、美人なお客が一人居ることだろう、名前を聞いてみると、ハスキーボイスで「美恵子」と名乗る、仕事は、納得のモデルだそうだ、となりの怪しい男は、神経質な高い声で、「美術」を、専門にやっていて、名前を「静夫」というらしい、結局自己紹介を、する事になったが、あまり、友好的な人間が少ないらしく、各、沈黙することとなる、時間はぴったり予告通り一時間で、到着すると、船は、険しい岸壁に、掘られるように作られた、階段が見える、木の船着き場に、到着する、執事は、てきぱきと、スマートに、荷物を持つと、急な階段を、案内する

「えー登るのー」と彼女は言うが、残りの客は、さも当然のように、執事の後を、追う、後ろから、彼女を、押しながら、ようやく登り切ると、そこは、強風でも吹くのだろう、短い草が、一面に広がり、その何もない中央に、突然歪に、白と灰色の建物が、巨人にでも置かれたように、生えていた


全員の部屋に、荷物を運び終わると、執事は、船を、返しに行くと、海に出てしまう、何でも、低予算のため、漁船を、近くで、漁をしている、漁師に、一端返して、そのときに、数人乗っている誰かに送ってもらうと言うことらしい、それまで、漁を手伝うというのだから、恐ろしい、その間は、自由時間であり、屋敷でも、外の散策も、可能らしい、しかし、妙なことに、だれも、部屋から出ず、そのうち、酷い雨が降り出したと思い、部屋から外を、見たときには、荒れ狂う波が、窓の遠くしたで、島を削らんとするように、ぶつかり合い、取って付けたような、島に二三本しか生えていない椰子の木が、振り子のように、激しいダンスを、ごうおんをバックミュージックに、踊り狂ってた・・良くは知らないが、これは、探偵物に良くでるという、あの状況ではないか、もしかすると、このよくで来すぎた環境に、僕は疑いを持って、窓を開けたが、そこには、目で見たものと同じ光景が広がっており、少なくとも、液晶画面が埋まっていたわけではなかった


何となく嫌な予感はしていたが、屋敷には、執事は、おらず、冷蔵庫があると思われる厨房を捜し当ててみると、少なくとも一週間ほどは、なくならないと思われる食材が、冷凍されていた、これで、一安心と、思えたかに思われたが、事態は、そう丸くは、収まっては居なかった、なぜなら

広いロビーに置かれた、テーブルに、一枚の紙が置かれていた、その黒い封筒を開けると、中には「この島の人間を、皆殺しにする」と言うような趣旨のことが書かれていた、僕は急いで、全員の部屋に、走った、部屋は全部で三室、自分と彼女が、一階、静夫という男は、地下一階、美恵子さんは、二階にいる、取りあえず彼女を、起こしに行くことにした、先程まで、部屋で眠っていたのだ、こんなことであれば、一緒に連れて行く方が良かったのだろう、部屋に鍵ではいると、いつの間にか起きており「どうしたの」と、あまりはっきりとしない口調で、僕を呼んだ、そこで僕は、一通り、説明をして、彼女は、美恵子さん、僕は、静夫を、起こし、全員で、先程の手紙が置かれていたロビーに集まることにしたのであるが、残念ながら、いくら待っても、彼女たちが戻ってくることはなかった

仕方なく、二人で、二階に行くと、あくせく扉をけっ飛ばしている彼女の姿が目に入る

「どうしたんだ」

僕は、何となく予想しそうな考えがあったが、そう彼女に聞くと

「なんか、部屋の中で、うめき声がしてるの」と、涙声が入り交じっている、僕は、「どけ」」と、短く叫ぶと、扉に、けりを、一発、入れると

「パリーン」と鈍い音がして、僅かにきしむが、案外頑丈なもので、入れるほどではない

「退いてください」

どこから出してきたのか静夫は、真っ赤な斧を、手に、扉を叩き割る

壁にへこみがあり、そこのガラスが割れているから、きっとかれが、叩き割って取り出したのだろう、斧は、取っ手を、切断し、以外と簡単に、部屋に進入できた、しかし、そこにあった物は、血塗れの美恵子さんの倒れている姿だった、その光景に、僕は、急いで、あわてることなく、彼女の手首を触る、しかし、その手は驚くほど冷たく、とても生きているようには見えなかった、そして、脈も、当然のようになく、同様もなく僕はただ、うろたえていた

これは、イベントなのだろうか、それにしては、おかしい、それこそ、金持ちの趣味で、本当に死人を出すゲームをやっていないとは限らないが、もしそうだとしても、死体がでている以上、これは、何らかの解決を見せなくてはいけない、近くでみたところ、首から出血しているらしく、絨毯を、真っ赤に染めている

しかし、これは一体誰がやったのだろう

もちろん、僕を除いた二人になるが、そこで、僕は、ある問題点に気がつく、直ぐに立ち上がると、部屋にある、窓を、全て調べてみたが、どこも鍵が開いているわけではない、それどころか、こんな高さ・・下を覗いても、あるのは、断崖絶壁、良くこんな場所にわざわざ建てたという物件だった、と言うことは、残り二人どうこう以前に、これは、どうやって、遂行したというのだろうか、見たところ、凶器はないが、どう見ても、自然死という感じではない、彼女が、見かけによらず、重度のリストカッターだとしても、凶器が見つからない時点で、微妙だ、それに、死体ばかりに目を当てていたが、部屋は、酷い有様で、それこそ、大地震が起きたように、床はめっちゃくちゃで、部屋の物は、全てしたに転がっているような有様だ、もしかしたら、ここだけ、そのような地震が起きたとも限らないが

「どうしようどうしよう」彼女は、先程から、そんな感じで、うろたえている「大丈夫だよ、きっと」何の確証もなく、僕は彼女を抱きしめていた


どうも、おきまりという物は、徹底しておきまりらしい、無線はおろか、電話という電話は、コードが、きれいに、着られており、もちろん、船着き場に船の姿はなく、三人で、屋敷柔さがし回っても、執事はもちろん殺人鬼さえ出てこなかった、これは、良しとするべきか嫌だと思うべきか

気がつくと、日も来れ、仕方なく、夕飯を、こしらえることになる

二階のあの部屋は、今もあのままであり、今のところ、一番怪しいのは

自称芸術家と名乗るあの静夫という男だ、今のところ探偵はと言えば、運ともすんともせず、ただ、晩飯は何かと、しきりに、尋ねる始末

しかし、この島に、四人目が、居ないとかていすると、残りは、三人

そのうち、もちろん僕は除外するから、残りは、二人、一人は、彼女

もう一人は、静夫、島に着いてから、執事は、全員に、部屋に荷物を届けた後ロビーで、お茶を、出した後、すぐさま、退室、そのまま帰ってきては居ない、と思われているが、確証はない、今現在、もっともこの島に詳しい人物だ、こっそり隠れて、次の獲物を、ねらっていることも十分に考えられる、しかし、今現在は、もしも、ではなく、考えられる範囲からだ

お茶を全員で、飲んだ後、特に船どうようかいわもなく、各自部屋に戻った、他の人はどうかは、分からないが、彼女は、船酔いしたらしく「寝る」と、一言、言って、ベッドに寝てしまう、しばらく、どんよりと曇った空を眺めていたが、自分もやることもなく、これから起こるであろう推理イベントに備えて僕も同じく眠りについた、知らない布団だというのに、珍しく、眠ってしまったようだ、どうやら疲れていたのだろう

と、この時点で、僕は、明確に、かのじょのアリバイを、自分で実証できないのだ、そこで僕は、考えるのを中断した、もう、アリバイを証明する素材がつきてしまったからだ


夕飯を、手早く済ませると、何もかいわもないまま、皆食べ終えてしまう

一人、「デザートは」と、繰り返すちりとりであったが、僕は、それを無視して、会話を進めた

「これからどうしましょう」

すすまたは良いが、これまた、何も考えが無く、二人に分投げる形となっていた

「どうしようって、そんなの、部屋に戻っていた方がいいんじゃないの

もし、外に殺人鬼が居たら、こんなロビーなんて、逃げるところもないし」

「それはどうでしょうか、部屋だからと言って、果たして安全かどうか」

静夫は、そう言うと、一人、コーヒーを、飲み込む

落ち着いているようではあるが、僕が目を向けると、僅かに、拳が、揺れていた

そのとき、何か、「パリーン」と鈍い音がした

「あっあれ」

そのとき、彼女が、雨にゆれる窓を、ゆびさして、青い顔をしていた

「どうしたんだ」

「外に、外に、人影が」

彼女はそう言うと、僕にしがみついてきた

そのとき一同は、みな、第三者、すなわち殺人鬼の存在を、示唆しただろう「追いますか」

僕は、静夫に、問いかけると

「ええ、行きましょう」と、その手には、いつの間にか、斧が握られていた、良く見ると、壁のへこみに埋め込められたガラスが割られている

そこから取り出したのだろう

僕は、彼女に部屋に戻っていろ、と、そう叫ぶと

二人で出て行こうとしたが、この隙に、彼女がやられそうな気がしたので

やむなく、静夫さんに、彼女と一緒にいてもらうことにした

そのとき、もちろん、安全策として、彼女に携帯をいつでもつながる状況に、しろと言い残し、僕は、包丁を、ひっつかむと、そのまま、嵐の外に、かけだしたのであったが


結論から言って、余りに追うのが遅すぎたのだ

途中、電話がかかってきて、その返事をすることにも、多少不覚を、えてい待ったのかも知れない、そろそろ部屋に戻ろうか、そう思ったときだった

「あれ、帰って、来たの、犯人見つかった泥男」

電話で、不自然な会話を、聞いた

どう言うことだ

「えっなに」

その後、つんざくような、悲鳴が、しばらく、携帯から聞こえ続けたのである


屋敷の外と携帯電話からの悲鳴が、妙な二重奏を、半音させている

嫌な感じしかしない、部屋に飛び込むと、そこには、青い顔をして、倒れている彼女の姿があったのである

「おい」

急いで、彼女の肩を揺するが、全く反応はない、しかし、このとき僕は、ある問題を、後から思い出すことにある、静夫が、どこにも居ないのだ

しかし僕は、彼女の脈をはかるために、腕に手を当てた

無い

全く動いていない

先程まで動いていたはずなのに

そこには、無機質な、冷たささえ覚えるそんな感触が残る

どうしよう

僕は、部屋を飛び出した

しかし、直ぐなり、部屋に引き返す

そう言えば、あいつはどこに行った

彼女を、見張っていたはずなのに

あいつが・・でも、そうなると、明らかにおかしい

それじゃあ、どうして、急に、彼女は、僕が帰ってきたことを示唆する

内容の言葉を発したのだろうか

それは、明らかな、第三者が、僕は、怒りにふるえながら、椅子に着いた


翌朝、僕は、外にでると、昨日とは打って変わって、波は穏やかであり

なおかつ、頭はさえ渡っていた、これでもう全て終わりだ

後は、あの執事が、船で迎えに来てくれれば

もう、悩む必要はない、後は、全て警察に任せればいい

もし無能なのであれば、僕が、なんとしても助ければいいのだから

僕の気の済むままに、彼女たちのためにも、犠牲者のために


「だから、あんたが全てやったんだろう」

薄暗い室内

僅かに光るスタンドライトが、机を照らす、煙が充満して息苦しい

「僕はやっていないんですよ」

事件が解決されるどころか、僕は窮地に立たされていた

「そうはいってもですよ泥男さん、証拠が、多数、出てきているんですよ

掘れば掘るほどざっくざっくと」

「知りません」

何度繰り返したか分からないことを、この脂ぎった四角い男に投げかける

「そうですか、あんたは、どこに出しても疑われるような、そんな人間ですからね、品行方正全てが駄目、女を脅し犯し全く、今までよくしにませんでしたね」

「何を言っているんだ、そんなことは、今回は」

「じゃあ言いますが、この監視カメラに写っている、これは、誰だと言うんですか」

そう言って、何十回と見せられた、不可解なビデオ

そこには、廊下を歩く、僕の姿が映っていた、それはどこからどう見ても僕であり、それだけなら、なんと言うこともない話なのだが、問題点は、その時間帯である、それは、廊下に張り巡らされた監視カメラの映像であり、第一の被害者の死亡時刻時の進入、その映像には、僕の部屋から、そのまま、二階に向かい、数分後、また自分の部屋に戻る姿が、次の殺人にも、何ら覚えがないのに、僕は、玄関から、嵐の中進入している

このとき、その手には、携帯電話が握られていない

おかしい、しかし、どこからどう見ても、それは、僕なのだ、自分がどういう顔をして、居るか、これほど、疑ったことはない、でも、鏡を、向けられた、その顔をうり二つ

それは、部屋の前に立つ

しばらくして、のぞき穴から確認したのだろう、彼女が中から鍵を開けた

そんな姿が、ちらりと確認できた、そのあと、僕とおもしきじん物は、堂々と、玄関から出て行き、その後に、また、やってくる人影が、それもまた僕なのである、そして映像は、朝まで動くことはなかった

「ね、これはどこからどう見ても、あなたなんですよ、もう、証拠品の宝窟、指紋血液靴跡から髪の毛まで、もう、あれですよね、犯人になりたいんですか」

僕は、沈黙した


この事件の恐ろしいことは、警察も、さして協力的ではないと言うことにある、僕という人間を、野放しにするよりは、冤罪にしてでも、牢屋に取り込んだ方が、いくらか世界はよくなるだろうと、ばかげている、しかし、そんな問題よりも、明らかに、おかしな事がひとつある

死体が全部すべて消えていたのだ

死体のない事件は事件ではない

僕は、結局釈放されるも、あまり納得のいくものではなく

そんなときに、ちりとりと書かれた、あまりにも歪な都会の風景を見つけては言ったのだ


「しかし、おかしなものですね、釈放されるというのに、家族の方は、誰一人としてこなかったじゃないですか、ほんとうに、あなたは死んだ方がいいのかも知れません」

「酷いですね、依頼人に対して、神様ですよお客は」

「ははは、冗談が過ぎる、全く、職業柄、いろいろと調べますけど

あなたは、最近みた、接触した人の履歴の中では、どぶだめ状態ですね」

「・・・」

「しかし、まあ、仕方がないでしょうね、母親は、鬱により自殺、父親は、若い頃に、離婚していると言うじゃないですか・・さて、犯罪者が先か、環境が、ってものですね」

「怒りますよ」

「まあまあ、そんな人を殺すような目をしないで、本題に入りますが、まず、穴なら、いくつもあります、馬券でも、女でもない、事件のほつれ」

「何なんだそれは」

「まず、漁師が、高級ボートで、港に帰ってきて、喜んだことと」

「どう言うことだ」

「いえ、証言によりますと、意気消沈で、乗っているときは、していたそうなんですよ、でも、帰ってきたら、その逆だったと」

「意味が分からない」

「そうでしょう犯罪者だから」

「・・」

「まあ、それだけですよ、でもよかったじゃないですか、これで、意気揚々と、次の犯罪を起こせるんじゃ」

「おい、まさか、それだけって言うんだ」

「そうですよ」


「いやー、お疲れさまです」

一人の女性が、缶ビールを片手に、美男に、乾杯をする

美男は、隣の英子に、それを繰り返す

「これで、あいつは一生苦しむことになるでしょう、次は自分がしぬ事になるんじゃないかと」

「ええ、はじめは、こんな事がうまく行くとは、とても思えませんでした

そう言う意味でも、良く、協力してくれました英子さん」

「私も、まさか、あの人が、そんなことをしているなんて、一緒にいるだけでも」

「妹の私からも、お礼を言います」

「でも、やっぱり、整形なんてする必要は、自分の特殊メイクの技術さえあれば」

「そうですよ、結構かわいかったのに」

「いいんですよ、これは、覚悟なんです、そう、元がにているから」

「まあ、双子だしな」

「でも、良く、死体なんて見つかりましたね」

「いや、言わなかったっけ、あれも人形で、そこにかなーりリアルに細工をすれば」

「まあ、こいつの技術力は、本物よりも本物っぽいから」

「すごいですよねー、それと同じくらい、彼氏さんの整形技術も」

「そうなのよねー、モデルの整形を専門にしているだけはある

なのに、これだけの美形なのに、ノー手術なんだから、なんか気持ち悪いわよね」

「おいおい、彼氏に向かって・・そうそう、またもとの顔に戻すから

予定立てて置いて」

「でも、完璧ですよね、いまのかおだって、いろいろと、特殊メイクでいじくってあるから、はがせば、すぐに」

「まあ、捕まるわけには行かないですから、あいつを、追い詰まるためには」


「さて」

私は、そう言うと、箒を、一端ソファーの横に置いた

一応の整理はついた、しかし、そのゴミを、穴のあいたゴミ箱に捨てるほど私はバカではない

この事件が、得てして、恐ろしいものが根底にある、それは、感情的でありながら、用意周到、これはもはや、死刑のない死刑執行と呼べるものだろう

死なない、だけれども、生きているわけではない感覚

嫌なものだろう

事の発端は、被害者の集まり、もしくは、その賛同を得られたものだろう

探してみたが、どこにも、あの島で行われるツアーを、制作した業者も、また、サークルも存在はしなかった、後で消されたことを懸念したが、情報屋にも、そんなものは、頼んでも出てこない、代わりに、依頼者には、双子の兄弟がいたことが、分かったが、今は、特殊メイクという

さもありなんと言う職種に就いていた

これで、過半数の謎は、解けたというもの

それこそ、サイコロの六を出すためにひたすら振るかのように

取りあえず、仮説を、建てまくる、そのために、積み木となる証拠を、集めれば済むことだ

まずはじめに、事前準備として、彼女が、彼の服装を、事前に用意していたのは確かだろう、そうでなければ、監視カメラの説明が行かない

次は島に着いた執事は、おそらく、ゆっくり効く睡眠薬を、紅茶にでも混ぜたのだろう、それは、彼女の死体を前にしたときも同じだったはずだ

食事に入れられていたと考えるべきだ

まず、第一の事件、これは単純だ、美恵子の部屋に、外に出ると言った静夫が、変装を、解いて、一階にある泥男と英子の部屋の窓からはいる

そのまま、偽の殺人を行う、このとき、彼女・・いや、彼が持っていた鞄から、人形を、取り出し、床に、大きな穴をあけ、そこに、彼を寝かしつけ、その上から人形をおく、最後に、首を、特殊メイクで、つなぎ合わし

血でもぶちまければ、素人目には、判別できないだろう、床をごまかすために、酷い状況に、したに違いない、ちなみに、彼女が彼だと思ったのは

部屋に落ちていた髪の毛が、どうしてか、男が、二人、女が二人だったのだ、これこそ、言い訳はいくらできるかもしれないが

そのあと、普通に、静夫もとい静子は、部屋を出ると、泥男の部屋に戻りまたまどから脱出、その後、英子が、鍵でも閉めておけばいい、部屋の鍵は、美恵子、いや、美恵男だろう、それが、自演自作で、鍵をかけ、元の位置に納まれば、すべて解決だ

そして、夜の部だが、この犯行は、美恵男だろう、外には誰もおらず、英子が、嘘の目撃証言を出し、泥男を、外に出す、このとき、一緒に、絵美男を、同室させたのは、予想外だったのかも知れないが

とにもかくにも、その間に、死体からぬけだし、ヘルメット状の特殊メイクでもかぶり、はじめから、外に出ていたのだろう、それこそ、ロープレもあれば、下にはたどり着ける、そのまま、部屋に入り、窓から、出て行く、その間に、彼女の腕に、厚いゴムでも張り付け、ならせば、さわっても、脈を確認できないくらいのことは、可能だ

その後、静子も、外に出れば、後は、勝手に、泥男が、眠るのを、待てばいい

翌朝、執事が、船を持って、島に着くと、泥男の姿の静子が、屋敷に、死体が、と言い、向かわせている間に、自分は、警察に連絡をと、本土に向かう、そのとき、二人も、つれて、逃げる、これが、筋書きだろう

ちりとりは、そう独り言のようにつぶやくと、ベッドの中で眠りについたのであった


強盗」


その場所は、都会の喧騒の隙間に、ぽっかりと空いた

まさしく、歪なくらい、平然とした、民家が、立っている

そのことに、気づくものはいるが、入ろうとするような者は、あまり居ない

なぜなら、そこは、まさしく、民家であり、好き好んで、そんな場所に踏みいる者は、泥棒か、あまりよろしくないほどの図々しい興味心を持ったものだろう、もしくは、強盗か、それは、その時々であろうか


騒音すさまじく、店内で、一人、掃除をしていた女のいる家の中に

覆面をかぶった男が、怒鳴り声とともに、入り込むと

「お前、静かにしろ」と、女の背後に回りながら、拳銃を、取り出すと

そのまま、頭に突きつけようとしたが、あいも変わらす、女は、掃除を続けていた、そのへいぜんっぷりに、男は、どうして良いかも分からず、拳銃を、向けるも、女は、変わらずに、箒を掃き続けている

「いい加減にしろ」

男の怒声も、女はつゆ知らず、飴色の床を、掃き続ける

男は、頭に血が上り、拳銃の引き金を引こうとしたが

「すいません、店内で、拳銃を引かないでいただけますか、罰金百万円です」

と、甲高い声に、辺りを見回した、そこで、口を人間みたいにスムーズに動かす日本人形を、見つけるも、そのあまりの大きさに、それは人間ではないかと、思い直す

「こっこれは何なんだ」

男の叫びは、店の中にこだますも、誰もきいてなど居ない


「あなたは何者なんだ」

何をしても、何ともすんともしない女と人形を間に、男は、辟易して、一回りして、もうどうにでも良くなり、さらには、頭が冷静になって、そんなことを、床にあぐらを掻いて、尋ねたのだ


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