準備万端

準備万端

　愛と死と楓と夏と秋と冬と春とワセリンと櫛と技巧派と厚紙とガムテープとテーブルゲームと賽子と大胆と合わせ鏡とマウスとクリックとダブルクリックと金言と熱湯と鹿とポシェットとポケットと回路とカイロとオルゴールと螺子とアリスと昔話と童謡と縄と紐と注連縄とファイルとビニール袋と紅茶と福袋とブルーベリーと米と生米と餅米と米兵と血痕と結婚とキッチンペーパーと数学と国語と算数と道徳と心と精神と郷愁と教習所と車とバイクと公式と天然痘と信仰対象と偶像崇拝とマウスピースとワックスと両面テープとセロハンテープとマジックテープと手品と記述と零と掛け算と割り算と足し算と引き算と綱渡りと明治と平成と平静と昭和と玄関とおにぎりとオムライスとステーキとハンバーグとパセリとチーズと人参と玉ねぎと胡椒と塩と歯車とコンセントと鳩時計とハリセンボンとリュウグウノツカイとデスクトップと話数と完結と中途採用と新卒と新入社員とベルトコンベアと国会と虫よけスプレーと発光体と未確認飛行物体とダブルクリップとスポンジと軽妙洒脱と銀行口座と光線銃とサイレンと生ごみとシンクと出刃包丁と象徴と小腸と大腸と唾液と前歯と奥歯と歯石と鼻息と漫才と反抗期と化粧道具と眼圧と症状と左舷と右舷と不凍液とサンタクロースと大塩平八郎と大塩平八郎のモノマネ芸人と大塩平八郎のモノマネ芸人のマネージャーと大塩平八郎のモノマネ芸人のアンチと大塩平八郎のモノマネ芸人のマネージャーのアンチと大塩平八郎のモノマネ芸人のマネージャーのアンチの家族と大塩平八郎のモノマネ芸人のマネージャーのアンチの家族の飼い犬と大塩平八郎のモノマネ芸人のマネージャーのアンチの家族の飼い犬の唾と大塩平八郎のモノマネ芸人のマネージャーのアンチの家族の飼い犬の唾の雑菌と梟と知識と教養と偏差値と石膏と石灰と録音機材と録音機器と録音と黒胡麻と白胡麻とラーメンと三ツ星とチョコと懲役と死刑と失笑と爆笑と根性とチャックとファスナーとペンギンとコピー機とビールと黒ビールと焼酎と逆上がりと前回りと二重飛びとあやとりと日本語と英語とフランス語とイタリア語とチェコ語とアイヌ語と韓国語とオーストリア語と誤解と国境と仏像と中指と親指と手相と脚力と爪と胸毛と絶望と希望と非常口と迷路と当て字とルビとターザンロープとレコードとカセットテープとエピソードと勃興と隆起と口紅とロールモデルと布の切れ端とニキビと白髪と正解音と空間とドリルとパンチとキックとバックドロップ。

「これは、一体なんなのでしょうか」

「言葉の集合体、でしょうね」

「巨大ですよね」

「もう少し、小さくできそうですけどね」

「迫力を求めているのかもしれませんね」

「迫力で水増しですか」

「ちょっとダサいですよね」

「誰かにアドバイスとかもらってるんですかね」

「もらってなさそうな感じがしますよね」

「どうします。アドバイスとかしてあげた方がいいですかね」

「迷惑なだけだと思いますよ」

「でも、気づいてしまったので」

「じゃあ、アドバイスをしてみたらいいんじゃないですか。きっと喜びますよ」

「本当は、思ってないですよね」

「つまり、あなたも気づいてるってことですよね」

「まぁ、はい。でも、でもですよ。だって」

「でもって言わない方がいいですよ。気づいてる時点で、この話は終わってますから」

「終わってません。絶対に終わってません。だって、合ってるから、絶対に合ってるアドバイスだから。こんなに考えて、ちゃんと言葉を紡ごうとしてるのは私だけだから。一所懸命に伝えようとしてるんだから、何を言っても正解に決まってるから。皆目見当違いでも、言う権利はあるから。だって、言っちゃいけない決まりなんてないんだから。そうでしょ。正解発言だから、大正解、大正義、正しいに決まってる私の発言、だから。絶対正義絶対大正解、正しい発言を言いまくっちゃう、ちょっとお節介だけど、優しい私の正しい発言、だから。全部分かってる私の、大正解大正義絶対正義絶対大正解、道徳モラル全部持ってて、間違いのないアドバイスだけしちゃえる、正確良くて優しい、花丸百点満点人間代表格の私の発言だから。絶対正しい、正しい、正しい、正しい、正しい」

「気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、おいっ、おいっ、おいっ」

「絶対究極最強ご名答人間である私のっ、大正解大正義大発言っ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ、気合いだっ。おいっ、おいっ、おいっ、おいっ、おいっ、おいっ、おいっ、おいっ」