鏡人

とことこ

第1話 私立五線空高校

「おい、早くしろよ。」

「ごめんなさい...。」

「はぁ!?おい、こいつ千円札2枚しか入ってねえじゃねぇか。」

「2000円だけぇ...?はぁ、つっかえねぇ。」

「ごめんなさい...。」

「もういいわ、行こーぜ。」

「何買う?」

「んー、赤マル買うか!」


 はぁ...。またいじめかよ。頼むからそういうのは俺の見てないところでやってくれ。

 俺はこの高校で非常勤講師として働いている。本当は公立高校で働きたかったのだが、教員採用試験に落ちてしまい、仕方なく私立高校に応募して、そのまま非正規雇用で働くことになった。

 正直さっさと辞めたいというのが本音だ。早く次の教員採用試験に受かって公立高校に行きたい。

 辞めたい理由は2つ。ひとつはとにかく薄給であること。それに加えてボーナスがないもんだから呆れてしまう。もうひとつは、なぜか生徒指導の役を任されてしまったことだ。学生時代に柔道で全国大会に行った実績が逆に仇となり、自分の首を絞めてしまった。

 まぁ、うちの高校での生徒指導というのは案件が来るまでは仕事がない。つまり、楽をしたければ見て見ぬふりをするのが必須だ。

 先程のいじめも無視を続けりゃいい。被害者が自殺をしても謝罪をするのは校長。俺に負担はかからない。

 さぁ、今日の業務も終わったことだし帰宅しよう。



 プルルルルル━━━。

帰宅途中、俺の携帯が鳴った。

「もしもし?」

「よお、涼太。元気してるか?」

誰かと思えば高校の同級生の木村だった。こいつは高校の時に唯一できた友人だ。

「今週の土曜日空いてるか?面白そうな骨董品屋を見つけたんだけど、行かね?」

 こいつの趣味は週末に骨董品屋巡りをすることなんだが、別に骨董品が好きな訳ではないらしい。かれこれ7年間も続けてるため俺も骨董品に興味を持つようになってしまった。

「悪いんだけど、土曜は部活があるから日曜でもいいか?」

「あー、お前部活の顧問もやってるもんな。おっけー日曜日に行こう。」


【記録―2020年10月 男が骨董品店にて呪物を購入する】

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鏡人 とことこ @chupi__xxx

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