後編

「お疲れ様です」

「お疲れさん」


 放課後の屋上に行くと、やはり先にいた。


「似合っているよ」

「ありがとうございます」


 その日とに深々とお辞儀した。

 彼は1つ上の先輩の将智まさとしさん。

 ふらっとどこかへ行ってしまう雰囲気が漂っていて、少し危険な香りもしてくる。

 色気がある、なんて女子生徒たちは興奮しているそうだ。

 私からしたら、前者は理解出来ても後者は何にも感じない。

 落ち着きのある人だなとしか思わない。

 彼は普段制服なのだが、今日は私の為に着物を着ていた。


「こっち来なよ」

「はい、失礼します」


 1人分空いていたスペースを埋める為にスッと隣に移動した。

 緊張してきた。どうしよう。

 彼は私をじっと見ているー…更に緊張してきた。


「慣れない?」

「だって…」


 …


 言えない、どうしても。

 俯いていると、優しく頭を撫でてきた。


「先輩、あの!」

「よしよし」


 声が出なくなる、反論する気持ちがなくなる。

 どうしようもないなと自分が情けなくなる。

 きちんと言葉に出来るなら苦労なんかしない。

 言いたい、でも、言えない…。


「分かっているから、無理はするな」


 先輩の横顔は優しい。魅とれてしまう。


「ゆっくりで良いから…今は傍にいてくれ」


 上手く伝えられない自分だけど、行動で表すべく、彼の手を取り繋いだ。

 すると彼は優しく握り返してくれた。

 好き…将智さんのこと…大好き…。


 出会ったのは去年、夏休み明けて直ぐ、この屋上で。

 彼がポツリポツリと独り言を言うのでそれを聞いて、いつの間にか会話をして、自然な流れで出会ってまだ3ヶ月。

 告白されて、付き合うことになって、1年は経過していた。


 いつか自分の気持ちを伝えられますようにー…

 頑張ります。


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【短編】好きなんだけど…どうしよう 奏流こころ @anmitu725

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